秋からキャンパス生活?

2020年6月に高校を卒業したニナは、その年の秋に自宅から車で40分ほどのカリフォルニア大学のキャンパス内の寮に引っ越すはずだった。しかし、パンデミックは収まることがなく、初年度は100%オンライン講義となり、寮をキャンセル、ニナは家に留まった。ところが、ニナの友人で同じ大学に進学したCはキャンセルせずに入寮。ちなみに、本来なら3人や2人一部屋のところを、コロナ対策で個室に入っているという。ニナに「オンライン講義なのにCはなぜ寮に入る必要があったの?」と聞いたところ、「それはCの決断だから別に自由なんじゃない? すべての子どもが家に残りたいわけじゃないよ」と言われてしまった。

ニナの友人には東海岸や中西部など、遠方の大学に進学した人もいるが、彼らはオンライン講義でも現地入りし、寮で生活している。そのほうが確かに「大学生になった」実感は湧くに違いない。一方、シカゴ在住の友人の娘さんは、2020年の夏休みの間、寮にすべての荷物を運び込んだ後に100%オンライン講義が決定。寮をキャンセルし、荷物を再び自宅に持ち帰ったそうだ。

寮をキャンセルする理由は、「講義がオンラインなのでキャンパスで生活する必要がない」ということ以外に経済的な理由もある。全米の公立大学の年間の寮費の平均額は約9000ドル、私立大学の場合は1万ドルを超える。これ以外に食費もかかるのだから、家で生活したほうが安く済む。

アパートをシェア

そうこうしているうちに、2021年秋からのキャンパスでの住居を確保する時期が来た。この原稿を書いている4月現在、秋からは対面式の講義がスタートする予定だ。ニナはキャンパス内のアパートに申し込んだ。「寮に入らないの?」と聞くと、なんでも寮はフレッシュマンに優先的に権利が与えられるそうで、ソフォモアになるニナの当選確率は低くなるらしい。「アパートは3、4人でシェアすることになるけど、寮より安い」のだそうだ。ニナは、1年目は寮に入っていたCとルームメイトになれるように申請したが、残念ながら「同じ棟だけど同じ部屋には入れなかった」と結果を教えてくれた。かと思えば、前述のシカゴ在住の友人の娘さんの大学は「少なくとも1年は寮で生活しなければならない」というルールがあるそうで、2年生でも寮生活がマストだと話していた。大学によってそれぞれ事情や規則は違うのだ。

そして、アパート入りが決まった後、ニナの髪を切りに行った先で、娘を寮に入れたりルームシェアさせたりした経験がある美容師さんがこんな話をしてくれた。「共有の冷蔵庫に食べ物を入れておくと、平気で他人のものを食べてしまうような人もいるから、自分だけの保管場所を確保するように」。これまで我が家のルールだけに従っていれば良かったのが、初めて他人との共同生活が始まるのだから納得できないこともあるだろうし、新しいことをいろいろと学ぶだろう。私自身、大学の4年間はハウスシェアをしていた。ただし、玄関、トイレ、浴室と洗濯機が共同なだけで、5部屋あった個室にそれぞれ小さなキッチンが付いていた。つまり同じ冷蔵庫を使う必要はなかった。階段の踊り場にはピンク電話が置いてあり、そこに座り込んで誰かが長電話したりしていたのも携帯電話がない頃の思い出として懐かしい。

私の話はどうでもいいのだが、ニナの気持ちはすでに秋からのリアル大学生活に飛んでいる。私にしてみれば、パンデミック自体はもちろん歓迎すべきことではなかったけれど、ニナが家からいなくなる時期を1年先送りできたというメリットもあった。しかし、いよいよ巣立ちの時が迫っている。「州外ではないんだから週末ごとに帰ってきてね」とニナに言うと、彼女は「オーケー、メイビー」と答えたのだった。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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