日本の食材を全米にお届け
ごはんマーケット

Text:Saori Shibata

New Business Close Up
アメリカで新たな事業を手がける人物をクローズアップするインタビューシリーズ。

昨年12月にソフトオープンした「ごはんマーケット」

2年前に日本食品のオンラインストアをオープンし、2021年12月22日にはジョージア州アトランタで実店舗をソフトオープンした「GOHAN Market(ごはんマーケット)」の代表・杉田貴彦さんに話を聞く。

お客様と一緒に
お店を育てていきたい

ごはんマーケットの代表・杉田貴彦さん

GOHAN Marketは、オンラインおよび実店舗で日本の食料品販売を行うグローサリーストア。ジョージア州アトランタに店舗を構えビジネスを展開する代表の杉田さんは、元はロサンゼルスに住んでいた。ロサンゼルスやニューヨークといった大都市では日系グローサリーが多く当たり前のように日本食材が手に入るが、地方都市ではそれがなかなか難しい。杉田さんはそこに目をつけた。「オンラインストアのデータを分析すると、フロリダからのオーダーが多いんです。アメリカ南部では、日本食材店がまだまだ不足しているんですよね。供給しようにも、西海岸に拠点を置くと南部までの送料も高くついてしまう。その点、アトランタ は5州に囲まれた中心都市で、需要も多く送料的にもメリットがあるので出店を決めました」と杉田さん。

スタートアップ時は食品や健康・美容品など600商品ほどだった取り扱い数が、現在では倍の1200商品まで増えたという。追加した商品はすべて、お客様からの問い合わせをきっかけに仕入れを始めた。たとえば日本野菜の種は、カリフォルニアにあるKitazawa Seedから仕入れたものをオンラインで販売している。「日系グローサリーが近くにない地域にお住まいのお客様から、日本野菜を売って欲しいという問い合わせを何度かいただいたんです。葉物野菜は傷みが早く、オンライン販売だと到着日が読めず夏場は難しいので、じゃあ自分で栽培してもらおうということで種の販売を始めました。離乳食も、問い合わせが多かったので取り入れたカテゴリの一つです。ごはんマーケットはこのように、お客様に育てていただくことをモットーとしています」。

杉田さんは大学卒業後、雑貨店での勤務経験を経て渡米し、日系小売業に転職した。「物売りの世界に入り、生活必需品である食品を売る仕事は非常におもしろいと感じました。日本食のおいしさや質の高さをもっと世界の人たちに知ってもらうにはどのように訴求すればいいかを考え始めたのが、このビジネスを始めるきっかけとなりました」と杉田さん。

ちなみに、ごはんマーケットのオンラインの受注は日本人が25%ほど。75%は日系人や日本人以外の消費者が占めているそうだ。アメリカ人消費者へ訴求していくために、ウェブサイトやSNSの運用も工夫しているという。「ウェブサイトは日本語と英語の両方を表記しています。SNSではTwitterは日本語、InstagramとFacebookは英語で発信するなど、使い分けを行うことで認知度向上を図っています。最近は、SNSの投稿で思いも寄らない商品がバズって売り上げが急上昇するなど、予想外の動きも多いのがおもしろいですよ」。

バーチャルからリアルへの出店

店内の奥にはイートインスペースも

もともとは店舗オープン後にオンライン事業をスタートする予定だったが、コロナ禍で出店計画が1年以上延期になり、オンラインを先にスタート。そして2021年12月22日、ついに実店舗のソフトオープンを迎えた。杉田さんは、結果としてこの流れで良かったと言う。「SNSやオンライン上で事前に知ってもらったうえでの実店舗オープンとなったのは、良かったなと思います。オンラインストアの売り上げから、エリア分析や商品別の数量分析といったデータを揃えて店舗の準備に臨めたのが大きなメリットでした」。

これまではサラリーマンとして業務の一面しか見ることがなかった杉田さんにとって、店鋪デザインから工事、市町村への申請、採用、支払いなどすべてを自身の裁量で行うのはこれが初めて。苦労したことについて聞いたところ、総じて楽しかったという答えが返ってきた。「この歳になって人に頭を下げながら新しいことを学べたのは、大きな財産になったと思います。常にポジティブに考え感謝の気持ちを持って人に接すれば、いろんな出会いがあり良い結果が生まれるんだなというのを体感できました」と笑顔で話す杉田さんは楽しそうだ。

日本とアメリカのビジネスの違いについては、こう話す。

「日本はどちらかというと “お客様は神様” というような、受注側は絶対服従みたいな文化がありますが、アメリカの場合は対等な立場で接するんですよね。同じ目線で仕事を作っていく、チームを作るという感じですかね。そこは日本と違ってアットホームだなと感じました」

難しいからこそ挑戦したい

日本らしいお弁当やパンなど、自社ブランドに力を入れている

ごはんマーケットの今後の展望について聞くと、「200店舗・200億」という大きな数字が出た。「アトランタ店はキッチンもついており、イートインもできるグローサリーのコンパクト版のような感じです。ビジネスモデルは今も模索中ですが、日本のコンビニエンスストアのようなお店を目指したいと思っています。まずはアトランタにもう2店舗ほど増やして、その後はアラバマやテネシーのナシュビル、フロリダ、ノースキャロライナ、サウスキャロライナ……。徐々に店舗を増やして、将来的にはフランチャイズ化したいですね」。

同社ではサクラレーベルという自社ブランドも展開している。こちらも今後さらに強化していきたいと、杉田さんは話す。「サクラレーベルではパンを製造しています。台湾人のベーカリー工房と共同で研究・開発した日本のパンを、金〜日曜に販売しているんです」。現在はあんパン、メロンパン、焼きそばパン、抹茶パン、卵パンなど、日本的なしっとりもっちり系のパンを販売している。今後は市場にない自分たちのオリジナル商品の研究・開発に励んでいくそうだ。

「食品メーカーやベンダーに『それは無理だよ』と言われることもありますが、みんなが無理だと思うことに僕は挑戦したいんです。オンラインストアもその一つ。オンライン販売ってものすごく手間がかかるし、倉庫でのピッキングや梱包も大変で、さらに単価が低いので労働のわりに売り上げがついてこないんですね。みんながやりたくないと思う理由もよく分かるのですが、だからこそ挑戦する価値があるんじゃないかと思います。弊社ではオンライン事業を2年間続けて見えてきたこともありますし、新しい時代の働き方、経営の仕方など、とにかく新しいことに挑戦したいです」

最後に読者へのメッセージをお願いした。

「とにかく皆様の希望や不自由を教えて欲しいです。うちでできることなら何でもトライしたいので。ごはんマーケットは小さな会社ですが、革新的なイノベーションを提供し続けていきたいと思っていますので、よろしくお願いします!」

ごはんマーケット:
https://gohanmarket.com/

PROFILE
杉田貴彦
1975年埼玉県生まれ。大学卒業後、雑貨店勤務を経て渡米。日系スーパーマーケットに勤務。退社後、2019年DELICA Corporationを創業。2020年6月ごはんマーケットオンラインストアを開店。2021年12月ごはんマーケットアトランタ店開店。

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