オンラインでも「学校」は成立する
西大和学園オンライン補習校

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奈良県の進学校、西大和学園姉妹校の西大和学園カリフォルニア校が、2022年4月からアメリカで初の試みであるオンライン補習校を開設した。授業の感触を、オンライン補習校校長の谷口弘芳先生に聞いた。

オンライン補習校校長の谷口弘芳先生

日本語で日本の教科を学ぶ

西大和学園オンライン補習校は毎週水曜、午後3時45分(太平洋時間)から授業を行っている。2022年4月、小学1・2年生の2学年を少数クラスで開校した。日本語で日本の教科を学ぶクラスだ。

「コロナ禍にオンラインで補習校授業に参加していた遠方の生徒が、対面授業が可能になると授業を受けられなくなりました。そのような生徒のためにオンライン学校を実現できないかと考えたところから、今回の構想が出たんです」と、谷口校長は言う。以前からオンライン化の構想はあったのだが、当初は時代に合っていなかった。それがコロナ禍の経験を経て、実現可能ということが分かったそうだ。オンライン補習校ではもちろん、レベルを下げずに対面授業と遜色ない授業を提供している。

保護者からも多くの歓迎の声が

最初は、生徒の集中力が続くのか、先生側もどこまで指導できるかという不安があった。しかし実際に始めてみると、先生に見られているという意識が生徒の集中力を持続させていることが分かったという。さらに、課題をこなすことに予想以上の成果が出た。オンラインでも授業ができるという意識の変革が起こったのだ。

「経験がなかったのでネガティブな事象を想定していましたが、実際はポジティブなことばかりでした。生徒たちはこの環境でもこんなにできるんだと意欲が増しているのが分かり、先生側でも出した課題に生徒たちがきちんと応えてくれるという成果が嬉しい裏切りとなっています」と、谷口校長。最大10人の少人数クラス制で生徒個々人へ目も行き届き、授業がきちんと成立しているため、生徒の成長を実感しているそうだ。

オンライン補習校の生徒の保護者の中には「こういうシステムを待っていた」と歓迎する声も多く、とても好評だ。最近では、生徒みんなで会える機会を作って欲しいとの声も出てきている。

オンライン補習校は学校である

谷口校長は、「オンライン補習校は学校である、ということを知って欲しい」と力強く話す。「オンラインでも学校に通えるということに期待してください。個人クラスや塾など日本語を学ぶ機会は多くありますが、距離のために “学校” という選択を諦めている方もたくさんいらっしゃいます。そんな保護者の方々に、西大和学園オンライン補習校は学校であることを広く伝えたいと思っています」。

今後はディスカッションやグループワークを通して「総合的な力を育てる教育」を作るのが目標だと谷口校長は話す。「日本語を使う機会を日本の学校よりも意識して作りたいと思っています。西大和学園は、“真のグローバルリーダーを育てたい”という強い思いを持っています。本学園は、国と国を繋ぐグローバルな人材形成を支える学校だと理解して期待してもらえると嬉しいです」。 

将来的には、義務教育といわれる中学3年生までのオンライン補習校を計画しているそうだ。

西大和学園カリフォルニア校www.nacus.org

 

PROFILE
谷口弘芳
西大和学園中学校・高等学校(奈良県)で計12年間、学年主任、数学科教員、渉外室主任として勤務し、学年運営や大学受験指導、入学試験運営に携わる。姉妹校であるカリフォルニア校で平日校教頭、対面の補習校ロミータ校舎教頭を務め、2022年4月からオンライン補習校の校長に就任。

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