物流を制すものはビジネスを制すか? 
第22回

米国連邦海事委員会とNVOCC

米国連邦海事委員会は米国沿岸、湾岸周辺の安全と海運、港湾の円滑な運営を促す機関としての機能があり、発足当時から独立色を強めていた。たとえ米国の会社であっても、また米国に有益な起業であっても、米国の安全や利益を侵すものに対しては厳しい態度をとっている。

海事委員会の機能の内容を見ると、基本的には登録性を重視し、公共に益する内容のものは許可をし、そうでないものは排除する傾向がある。戦後の世界貿易、とりわけ米国の貿易が鈍化し、業界上げて規制の緩和が必要となった折、1981年に第40代アメリカ大統領に就任したレーガン氏は、思い切った規制緩和を実施することになった。停滞感の強かった米国経済の景気回復を政策目標に掲げ、「レーガノミックス」に代表される大型減税と積極的財政政策を実施し、経済の回復に努めたのだ。

その一環として1984年、米国海運法が成立。従来の規制を大幅に緩和し、貿易、物流をより行いやすくした。とりわけ海運業界においては、海上輸送運送業の定義が拡大解釈され、船の運航を行う従来の海運企業に対して、船を運航しないが輸送責任を持つ複合一貫輸送業への権限を増大。NVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier = 船を持たずに船荷証券を発行する輸送会社)の設立を後押しした。その結果、1984年以降、米国だけでなく、日本でもNVOCCと呼ばれる会社が数多く誕生した。

NVOCCとは前述の通り、海運企業のように船を運航することはないが、海運船舶会社の船のスペースを使ってみずから集荷し、自社のハウスB/L(複合一貫輸送会社が発行する輸送証明、輸送証券)を荷主に発行して輸送業務を遂行する会社のことである。彼らの発行する船荷証券は当然貿易上の取り引きにも使用でき、代金の決済にも対応可能である。L/C決済の場合、当然そのB/L(船荷証券)を銀行に持っていけば現金化できた。

従来は船社と荷主が当事者であり、間には通関などを行う乙仲と呼ばれる倉庫、保管、通関を行う会社が荷主に代わって業務を行う程度であった。しかし、NVOCCの台頭によって、荷主は船社と直接輸送契約を組むだけでなく、NVOCCとも輸送契約を組むことができるようになり、輸送会社の選択の幅も増え、サービスの広がりは貿易、輸出入の拡大に繋がっていった。

NVOCCには系列があって、その出身母体によって集荷の進め方やその後の進路も大きく変わっていった。たとえば、海運企業のグループから派生して誕生した船社系NVOCCと呼ばれるグループ。日本郵船系でいえば、JIT、商船三井系のMOL LOGI、川崎汽船系のCREST、昭和海運系のMULTITRANS、ジャパンライン系のCOSCO FREIGHTなどがそれにあたる。

次に商社系と呼ばれるグループがあった。日本の6大商社と呼ばれる三菱、三井、住友、丸紅、日商岩井、伊藤忠も、その運輸部が母体となってNVOCCが誕生。MC TRANS、TRI-NET、SUMITRANS、MARUBENI LOGISTICS、NISSHO LOGIなどだ。

メーカー系と呼ばれたRICOH LOGI、KONICA物流、また独立系として、混載を中心としてNVOCCをスタートしたCONSOLI系や、引っ越し貨物を中心にNVOCCをスタートした引っ越し関連NVOCC企業、倉庫系NVOCCなどなど。彼らは船社とサービスコントラクトという年間輸送契約を組み、その金額をもとに自社の運賃を設定し、顧客に販売し、輸送を請け負うのである。

船社はNVOCCから提示される年間の積み保証数量をもとに、海上運賃を設定する。当然ながら、数量が多いほうが提示される海上運賃が低く設定される。ただ、1980年当時の北米航路の配船船社は20数社はあり、どこの荷主がどこの船社とどれくらいのレートで契約したかは通常の場合は分からない。

しかし、オープンを前提とする北米運賃同盟やFMC(連邦海事委員会)は、ファイリングの義務化を進めるとともにオープン化も極端に進めた結果、ある荷主がある船社と非常に良い条件で契約が成立した場合、その金額を他社も閲覧が可能で、同条件であれば同じ運賃をファイリングできるということが頻発した。「私も同じ値段をお願い」「私も」「私も」とファイリングを急がれたことから、「ミーツー(ME TOO)」ファイリングと呼ばれた。

このオープン化はさすがに委員会内でも問題が多いということで、すぐに制限が加えられたが、北米航路と海事委員会の不思議な関係を象徴するものとして、業界の中では長く語り継がれている。

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赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

ライタープロフィール

外航海運会社で20年以上にわたり北米定期航路の集荷営業に従事。北米駐在を経て2013年9月、北米唯一の海運、港湾、物流情報発信会社SHIPFANを設立。
「日本海事新聞」紙上に「ロサンゼルス便り」、 ロサンゼルスのフリーペーパーに「物流時報」を定期掲載するほか、物流コンサルティング、物流セミナー、港湾ツアーの開催、輸出入のマッチング業務を手がけている。ロサンゼルス港に「コンテナ物流研究所」を開設。

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