アメリカ生活お役立ちBook

医療保険の仕組み、不動産市場、自動車事故の対処法、日本の老親介護など、アメリカで生活していくうえで必要な知識と最新情報を専門家がアドバイスする。

本特集は一般的なケースの情報提供を目的としたものです。特定事例におけるアドバイスが必要な場合は、専門家に相談してください。

医療保険

日本とアメリカの違い

日本の医療保険制度には、①すべての国民が公的な医療保険に加入できる国民皆保険、②どの医療機関・医師でも診療を受けることができるフリーアクセス、③医療を一部負担金のみで受けられる医療サービス給付、という3つの特徴があります。日本では全国共通の診療報酬点数制を導入しており、医療行為ごとに決められた点数を基に1点=10円として医療費が計算されます。

一方、アメリカでは基本的に各州の民間医療保険に加入し、公的機関の医療保険加入は高齢者、障害者、低所得者のみが対象となります。公的医療保険に加入する場合、収入に応じて州政府等から補助金が支給されます。たとえばカリフォルニア州ではタックスリターン時の世帯収入に応じて補助金が出るほか、保険料不要の医療保険Medi-Calに加入することもできます。

アメリカでは高額な保険料が支払えない無保険者の増加が問題となっており、2014年には国民皆保険のコンセプトに近いオバマケアが始まりました。それにより無保険の国民にペナルティを課す法律も生まれましたが、2019年にはトランプ政権下、このペナルティが排除されました。しかし、2020年には州レベルで無保険のペナルティを課す制度が出始め、現在はマサチューセッツ、ニュージャージー、バーモント、カリフォルニア、ロードアイランド、ワシントンD.C.がペナルティを設けています。

アメリカの医療保険の基本

現在の医療保険はベネフィットレベルをブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4段階に分けるガイドラインがあり、カバレッジレベルはブロンズが1番低く、プラチナが1番高いレベルとなります。アメリカの医療保険にはさまざまな自己負担条件が設けられており、レベルによって自己負担額も異なります。

以下、基本的な自己負担条件を覚えておきましょう。

Deductible(免責額)

保険会社が支払いを開始する前に加入者が支払わなければならない自己負担額。医療費がこの金額に達したら、保険会社からの支払いが始まります。

Office Visit(訪問費)

医師を訪問する際に毎回必要とされる費用。

Co-Insurance(自己負担割合)

Deductibleに達したら保険会社の支払いが開始されますが、保険会社が全額カバーするわけではありません。プランごとに自己負担割合がパーセンテージで設定されており、加入者は決められた割合を自己負担します。

Out of Pocket Maximum(年間自己負担額の最高額)

Deductible、Co-Insuranceを含めて加入者が自己負担しなければならない最高額。この額を超えると残りはすべて保険会社が負担します。

HMOとPPO

アメリカの医療保険制度には大きく分けて2つのタイプがあります。

HMO(Health Maintenance Organization)

医療保険会社のネットワーク内から主治医を選んで診療を受けなければならず、専門医にかかる場合も主治医を通して紹介してもらう必要があります。保険料や医療費はPPOと比較して安価なケースが多いです。現在、HMOを利用できるのは15 州に限られています。

PPO(Preferred Provider Organization)

医師・病院を自由に選んで訪問できる医療保険。ただし、ネットワーク外(Out of Network)の医療機関を使うと自己負担額が増加します。保険料や自己負担額はHMOより多い傾向にあります。

個人で加入する場合の注意点

勤務先が提供する団体保険に加入する場合は選択肢が制限されますが、個人で加入する場合は医療保険をどのように利用するかによって選択肢が大きく変わります。個人で選ぶ場合、利用する頻度やどの医師を利用したいかといった目的を整理すること、保険料やDeductible、Office Visit、Out of Pocket Maximumといった自己負担額を事前に確認することが重要です。

利用頻度が高い場合はシルバー、ゴールド、プラチナといったレベルの高いプランを選ぶと、自己負担総額を抑えながら良いベネフィットを享受できます。妊娠、出産といった大きな出費を予定している場合は、プラチナレベルのプランで年間最大自己負担額を抑えることもできるでしょう。一方、医療機関をほとんど利用することがない場合は、ブロンズプランで保険料を抑えるという考え方もあります。ブロンズでも年間の最大自己負担額はシルバー、ゴールドとほとんど変わりません。ブロンズプラン等にはHealth Saving Account(HSA)という保険料を抑えた分を非課税で貯蓄できる医療保険プランもあり、万が一の出費はHSA貯蓄プランから支払うことも可能です。

取材協力
Philosophy LLC
山口憲和
http://philosophyllc.com/

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