【ニューヨーク不動産最前線】
不動産に関する節税方法

またタックスリターンのシーズンがやってきました。毎年この時期は憂鬱です。通常の業務に加えて、タックスリターンのための書類の準備や作成に時間を取られるからです(今年は、悲しいかなコロナの影響で例年よりも時間がありますが…)。不動産ブローカーは会社に所属しているといっても、実は給料制の社員ではなく不動産ライセンスを会社に預けているだけで100%報酬制となります。基本的に契約に関する経費もすべて自費負担となり、タックスリターンのやり方としては個人事業主と同じ扱いになります。よって、タックスリターンも書類や資料の準備等が結構面倒なのです。毎年会計士さんと相談しながらやっています。

今回は(もうご存知の方も多いかと思いますが)、タックスリターンの時に不動産所有者がアパート(家)を持っていて良かったと思う、不動産に関する節税方法についてお伝えしようと思います。

まず持ち家の場合(戸建て・アパートともに)には、固定資産税が所得税控除の対象となります。残念なことに2019年のトランプの法改正以降、控除できる金額が上限1万ドルとなってしまいました。たとえばマンハッタンのアパートの場合、1ベッドルーム(700〜800SF程度)で平均的な固定資産税は月あたり1000ドル程度なので、年間1万2000ドル程度の固定資産税を払っていることとなり、上限1万ドルが所得から控除されます。

モーゲージの金利部分も控除の対象です。40万ドルの30年ローンを金利3%で組んだ場合には、初年度のモーゲージ支払いは月額1686ドルとなり、最初の月ではそのうちの1000ドルが金利支払い分です。金利は毎月目減りしていきますが、最初の年であれば1万2000ドル弱がさらに所得から控除されます。

さらに不動産の原価償却部分の税控除というのがあり、住宅用物件であれば購入金額(の建物部分※)を耐用年数である27.5で割った金額が適用されます。ただし、減価償却を続けていると最終的に物件を売却する時にキャピタルゲインが大きくなり税金を多く払うということもあるので、これについてはご自分のプランに合わせて利用するかどうか会計士さんとご相談されることをおすすめします。

今回は、不動産を持っている場合の節税効果について書いてみましたが、本音のところは、難しいことをあれこれと考えなくても気に入った家を買って楽しく暮らし、さらにそれが節税にもなっていたというのが理想ですね。

※一般的に土地・建物の比率は日本とは逆で土地2:建物8程度といわれていて、建物評価割合が高い分減価償却費は高くなります。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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