日米の昇給文化の違いと 2021年の米国の昇給率
- 2023年5月11日
波乱の2020年が幕を閉じ、新年への期待に胸に膨らませていたのも束の間。2021年も早いもので、折返し地点が地点が近づきつつありますね。
人材市場に明るい兆しが見えだした昨今、転職をすべきかどうかの判断基準として昇給率を意識される候補者の方々や、給与調整を検討する採用企業様からのご相談が増えてきました。
今回は、アメリカの昇給制度にスポットをあてて解説していきます。
1. 昇給とは
昇給とは読んで字の如く「給与の上昇」=「Salary Increase, Pay Raise」を指します。
「昇給」という言葉を聞くと、日本の方の多くが「昇格」「昇進」に直結するイメージをお持ちのようですが、決してそれだけとは限りません。昇給を決定づける要素は以下の通り、多岐にわたります。
- 担当業務の拡大
- 能力・スキルの向上
- パフォーマンス
- 企業の経営状態
- 労働市場の需要と供給のバランス
- インフレーション(物価上昇)やCPI(消費者物価指数)
会社内部や一個人を軸とするだけではなく、外的要因も含むんですね。
2. 日米の昇給文化の比較
冒頭に書いた通り、日本の方の多くが「昇給」=「昇進」「昇格」というイメージを持つのはなぜでしょうか?その背景を知るべく、日本とアメリカの昇給文化の違いを2つの視点からご紹介したいと思います。
雇用制度の違い
過去の記事 [転職社会アメリカ]でもご紹介した通り、日本とアメリカには以下の通り雇用制度に大きな違いがあります。
- アメリカ:ジョブ型雇用、能力給制
- 日本:メンバーシップ型雇用、年功序列給制
「頑張りに応じた昇給」という考えも近年では導入されはじめているようですが、まだまだ勤続年数が物を言う社会だと言える日本。日本の方の多くが「昇給」=「昇進」「昇格」というイメージを持つ背景の一つはここにあるよう感じます。
インフレ率の違い
各国のインフレーションの違いに関してお話する前に、ひとつご紹介をさせてください。
2016年5月、庶民の味として知られる日本のあの人気商品が、米国ニューヨーク・タイムズの一面を飾ったことをご存知でしょうか。
米有力紙ニューヨーク・タイムズは、赤城乳業社が定番アイス「ガリガリ君」を25年ぶりに、60円から70円に10円値上げしたニュースを一面にて掲載。幹部と100人近くの社員が並んで深々と謝罪するお詫びCMにも触れ、「景気低迷で物価が長年伸び悩む日本では、どんな値上げも重大ニュースだ」と驚きを伝えるとともに、デフレの象徴として皮肉を込めて報じた。
以下グラフで日米の過去20年のインフレーション(物価上昇)率の推移を見てみましょう。
アメリカが平均で2.12%成長しているのに対し、日本は0.04%、半数以上の年がマイナス成長となっています。アメリカの、特に都市部に住む方々は、家賃や物価の上昇からインフレを日々肌で感じているでしょうから、あえてグラフで見る必要もないかもしれませんね。
このように、アメリカでは物価の上昇はごく身近なこと。そしてインフレーションに応じ給与もあがって当然、と言っても過言ではないでしょう。
この感覚が存在しない日本では、給与が外的要因に影響を受けることはあまりないのかもしれませんね。
3. 米国の昇給率
それでは最後に、アメリカでどの程度昇給が実施されているかを見ていきましょう。
米国の昇給率の歴史
様々な企業や団体が実施する昇給率の調査によると、アメリカの平均昇給率は過去10年2~3%の間で推移しています。参考までに、人事労務管理のNPO団体WorldatWorkが1000社以上を対象に行なった調査結果を以下にてご紹介します。
2021年の米国の昇給率
コロナウィルスの流行にはじまり、BLM運動、大統領選挙など怒涛の一年をたどった2020年⇒2021年の昇給率はいかがでしょうか。各大手調査会社発表の調査結果は以下の通りです。
参考までに、パンデミック前に設定された2021年の予測昇給率は3%を越えていました。予測値から実際値が下がる結果となったのはリーマンショック後初の12年ぶりですので、パンデミックによる経済的インパクトの大きさが感じられるのは事実です。
ただ見方を変えると、コロナ禍でも少なからず昇給を実施している企業が存在すると言えますね。
昇給率の計算方法
(新給与ー旧給与)÷ 旧給与 x 100%
上記の式で、昇給のパーセンテージを算出することが可能です。
ぜひ計算してみましょう。
さて、あなたのポジション、企業の2020年の昇給率は平均値と比べ、いかがでしたでしょうか?検討する上での判断材料のひとつとして、参考にいただければ幸いです。
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