ベネフィットの重要性と代表例(PTO・保険・401k)
- 2023年6月22日

[転職大国アメリカ] の記事内で紹介した通り、転職文化の根強い米国では、「優秀な人材を確保する為には、充実した福利厚生はなくてはならないもの」とい考え方がスタンダードです。
[大転職時代の到来] に際した昨今の超売り手市場では、福利厚生の内容が採用の切り札と言っても過言ではないでしょう。
今回は、そんなアメリカの福利厚生制度について解説します。
アメリカは州や郡、市によって雇用の法律が異なります。ここでは一般的な情報ならび主要なエリアでの情報を記載させていただきます旨、ご理解ください。
1. 福利厚生とは?
企業(雇用主)が従業員(労働者)やその家族の健康や生活を向上させるために実施する施策・取り組みの総称。「企業が提供する従業員向けのサービス」のようなもの。
アメリカの福利厚生の起源は、1930年代まで遡ります。大恐慌から世界対戦にかけた厳しい労働力不足の打開策として、32代ルーズベルト大統領がリーダーシップをとり普及させました。
約100年をかけ形を変えてきた福利厚生。その構造は現在、大きく以下の2つに分けられます。今回は後者の法定外福利厚生にフォーカスして見ていきましょう。

2. 法定外福利厚生の代表例
見て字の如く、法律では定められていない「法定外福利厚生」。つまり各雇用主が自社のポリシーや予算に応じ、自由に内容を制定します。導入率の高い代表的な福利厚生をご紹介していきます。
Leave | 休暇制度
まずは日本でも一般的な「休暇制度」に関してです。導入していない企業はないと言っても過言ではないでしょう。以下のような休暇が存在します。
- PTO (Paid Time Off) or Vacation | 有給休暇
- Sick Leave | 傷病休暇
- Paid Company Holiday │ 祝日
- Birthday Holiday │ 誕生日休暇
- Floating Holiday │ 変動休日
- Bereavement Leave │ 忌引き休暇
中でも代表的なPTOとSick Leaveに関して、平均付与日数はそれぞれ年間10日前後だとアメリカ合衆国労働局は発表しています。

またアメリカの休暇制度の特徴として知っておくべきポイント2点をご紹介します。
- 段階的の付与
「○時間の労働あたり△時間の休暇を付与」という形で付与する企業が多いです。これを、累積(Accural )型付与と言います。 - 未消化分の繰越
使用しなかった休暇を最大何時間、いつまで繰越(Carry Over)できるかも企業ごとのポリシーによります。また、退職時に買取申請可能かどうかも同様です。
連邦法としては依然として法定外ですが、カリフォルニア州やニューヨーク市などの大都市圏でSick Leaveの提供を法令で義務付ける動きが近年多く見られます。
Group Health Insurance | 企業健康保険
次に、福利厚生の要を握る「企業保険」について。
まず、御存知の方がほとんどかと思いますが、アメリカには日本のような国民皆保険は存在しません。故に米国在住者は個人で保険に加入する必要があり、またそれは勤務先を通しての行われることがが一般的です。
アメリカ合衆国労働局の調査によると、 87%の正社員が企業保険を提供されているとのこと。弊社で採用をお手伝いさせていただいている雇用主様の企業保険導入率は100%です。
「一般的にどういった企業保険を導入すべきですか?」
「魅力的な企業保険のサンプルを教えて下さい。」
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そんなご相談をよく受けるのですが、残念ながらこの質問に回答をするのは難しいと言わざるを得ません。例えば皆様が、車の保険を選びたいとしましょう。その選択肢は無限であり、また詰まるところ、予算次第ですよね。
企業保険も同様、様々な保険会社が多岐にわたるプランを用意している為、一般化してお話し辛いという状況です。
ここでは企業保険そのものを構成するファクターをいくつかご紹介したいと思います。
- 導入している保険の種類
米国では、保険が以下の3つに別れています。 (健康保険、眼科保険、歯科保険)例えば、健康保険を持って歯医者や眼科に行っても、保険は適応されません。
大半の企業が全ての保険を提供しているとお考え頂くといいと思います。 - 月々の保険代の負担率
月々の保険加入費用を、企業側がどこまで負担するかを示したものです。
例:月々の保険代が$500と仮定した場合
雇用主が80%($400)を負担 残りの20%($100)は従業員の給与から天引
またこの負担率を、従業員のみで加入した場合、従業員の家族(配偶者や子供)も同伴加入した場合と分ける企業も少なくありません。
NPO法人KAISER FAMILY FOUNDATIONの調査によると、企業負担率は80%前後が主流だそうです。 - プランの概要
どこまでの医療費がカバーされるかは保険次第なので、話始めると切りがありませんが。。。
保険会社の規模(名の通った大手保険会社か)、使用できる医療機関に制限はあるか(HMOかPPOか)が主な論点となるかと思います。
Retirement Plan| 年金制度
最後に、年金制度について。
アメリカには公的年金の Social Security | ソーシャルセキュリティーがあり、これは冒頭の法的福利厚生に分類されます。
これを補うものとして任意の私的年金制度を企業が提供することも一般的です。種類は多種多様ですが、今回は最もポピュラーな企業型確定拠出年金プラン「401(k)=フォー・オー・ワン・ケー」にスポットをあててみましょう。
401(k)は、給与の一部を年金に回し自身で運用した上で将来引き出すことを目的としています。以下3つのポイントを把握することをお勧めいたします。
- マッチング拠出の有無
マッチング拠出とは、従業員が拠出した額に対して、事業主が上乗せして拠出する制度です。 - マッチングの割合
マッチング拠出がある場合、どの率で上乗せするかを示します。
例:給与の5%までは100%マッチ
課税前の年収が10万ドルだったとしたら5000ドル($100,000X5%)を上乗せ(つまり雇用主が、給与とは別に”年金”という形で従業員に支給) - 受給権付与
離転職等により早期退職した場合、マッチングで得た金額の没収は発生するのかどうかなどを示したものです。
その他
上に述べた代表例3つとならび、よく見られる福利厚生の例をご紹介します。
- Company Provided Car, PC, Cellphone | 社用車、パソコン、携帯
- Relocation Assistance | 引越し補助
- Flexible Work Schedules | フレックスタイム制
- Healthcare Spending Accounts | 医療用貯口座
- Gym Memberships or Discounts | ジム費用補助
- Tuition Reimbursement | 学費補助
- Stock Option | 自社株の一定額購買権
3.福利厚生のトレンド
先述した代表例に加え、いくつか近年のトレンドをご紹介します。多様化する我々の生活スタイル。それにあわせ、柔軟かつユニークな福利厚生を提供する企業も増えてきました。
Remote Work | リモートワーク
91% の成長率で過去10年在宅勤務が増加。
400万人 近くの米国口が2020年現在在宅勤務をしている。
参照:Remote Work Statistics | FlexJobs
著しい成長率は、昨今のIT化が根本にあることは言うまでもないですが、在宅勤務の許可により「社員の生産性があがった」「売り上げがのびた」という調査結果も多く存在します。
Unlimited Vacation|無制限休暇

2004年と早い段階からこの制度を導入しているのが動画配信サービス事業を行うNetflix(ネットフリックス)社。同社の社員は、「好きな時に」「好きなだけ」休みをとれ、また会社がそれを追跡することはありません。
1997年DVDレンタル会社として創業して以来、今や世界最大級の動画配信メディアとなったその成長の裏には、「自由と責任の文化」の理念があったことは有名な話でしょう。この流れにのり、ソニー社やDropbox社などIT系の企業を中心に本制度を導入が昨今多く見られます。
充実した福利厚生を提供→従業員の労働環境を快適に→会社も成長、とう素晴らしいサイクルがつくれたら素敵ですね。
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