国籍制度と外国籍を取得した人の日本国籍喪失手続き(後編)
~海外で日本人から出生した人のケース~

前編に続き、外国籍を取得した人のための参考情報として国籍の取扱いについて紹介します。今回は外国で日本人から出生した子のケースについてです。前回(前編)で紹介した元々の日本人が外国籍を取得したケースとは異なり、出生時から(二)重国籍者となるため、最終的にどちらかの国籍を選択することができます。この点が外国籍を取得した時点で日本国籍を喪失したと見なされる親とは大きく異なる点になります。

重国籍者である本人(子)だけでなく、外国で出産した後に外国籍を取得した親にとっても重要なので参考にしてください。

A 国籍制度について
~法務省のウェブサイトから抜粋〜

前回同様国籍を管理する日本の法務省の説明から見ていきましょう。前編では国籍制度全般についての説明を紹介しましたが、今回は重国籍者に該当する部分のみ抜粋しています(カッコ内は各説明が記載されているウェブページになります)。

1.  外国で生まれた日本人夫婦間の子の国籍は、どうなりますか?
日本人夫婦の子が外国で生まれた場合であっても、出生によって日本国籍を取得します。しかし、外国で生まれた子が、出生によって日本国籍と同時に外国の国籍も取得したときは、出生の日から3カ月以内に、出生の届出とともに日本国籍を留保する意思表示(国籍留保の届出)をしなければ、その子は出生の時にさかのぼって日本国籍を失うこととされています。

なお、日本国籍を留保する意思表示をしなかったことによって日本国籍を喪失した子については、一定の要件を満たしていれば、法務大臣へ届け出ることによって日本国籍を再取得することができます。

<下記Webページ「国籍Q&A」のQ5>
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html

2. (二)重国籍者の国籍の選択とは?
日本の国籍と外国の国籍を有する人(重国籍者)は,一定の期限までにいずれかの国籍を選択する必要があります。この期限を徒過してしまった場合であっても、重国籍者はいずれかの国籍を選択する必要があります。国籍法上期限内に日本の国籍の選択をしなかった時には、法務大臣は国籍の選択をすべきことを催告することができるとされており、催告された方は催告を受けた日から1カ月以内に日本の国籍の選択をしなければ、原則としてその期間が経過した時に日本の国籍を失うこととされています。

<下記Webページ「1.国籍について」>
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html

3. 国籍の選択をすべき期限
国籍の選択をすべき期限は、次のとおりです。

・2022年3月31日まで
(1)20歳に達する以前に重国籍となった場合→22歳に達するまで
(2)20歳に達した後に重国籍となった場合→重国籍となった時から2年以内

・2022年4月1日以降
(1)18歳に達する以前に重国籍となった場合→20歳に達するまで
(2)18歳に達した後に重国籍となった場合→重国籍となった時から2年以内

※以上の期限を徒過してしまった場合であっても、いずれかの国籍を選択する必要があります。
※国籍法上、期限内に日本の国籍を選択しなかったときには、法務大臣は国籍の選択をすべきことを催告することができるとされており、催告を受けた日から1カ月以内に日本の国籍の選択をしなければ、原則としてその期間が経過した時に日本の国籍を失うこととされています。なお、1985年1月1日より前から重国籍となっている日本国民についてはすでに選択の期限が到来していますが、期限内に国籍の選択をしなかった時でも、その期限が到来した時に日本の国籍の選択の宣言をしたものとみなされています。

<下記Webページ「3.国籍の選択をすべき期限」>
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html

4. 日本国籍を喪失するのは、どのような場合ですか?
日本国籍を喪失するのは、次のような場合です(重国籍者部分のみ抜粋)。

(1)  外国の法令による外国国籍の選択
日本と外国の国籍を有する方が、外国の法令に従ってその外国の国籍を選択した場合には、自動的に日本国籍を失います。

(2)  日本国籍の離脱
日本と外国の国籍を有する方が法務大臣に対し、日本国籍を離脱する旨の届出をした場合には、日本国籍を失います(Q13参照)。

(3)  日本国籍の不留保
外国で生まれた子で出生によって日本国籍と同時に外国国籍も取得した子は、出生届とともに日本国籍を留保する旨を届け出なければ、その出生の時にさかのぼって日本国籍を失います。なお、日本国籍の留保をしなかったことにより日本国籍を失った方については、18歳未満(注)であって日本に住所を有する時は、法務大臣へ届け出ることによって日本国籍を再取得することができます。

<下記Webページ「国籍Q&A」のQ12>
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html

いかがでしょうか?少し長くまた専門的表現だったので、わかりづらいかもしれません。そこで下記の具体的なケースについて見てみましょう。

B 実務面からの具体的検証
~重国籍者は自分の状況と照らし合わせてみよう〜

重国籍者が20歳以降何もしないまま日本のパスポートを更新したらどうなる?

日本国外に居住している限り重国籍の状態であること自体は問題ありませんが、もし20歳前から保有している日本のパスポートを日本領事館などで更新する場合(または現在日本のパスポートが無く新たに申請する場合も)、問題が発生します。

申請書(一般旅券発給申請書)の記入項目の一つに「外国籍の有無」という部分があり、「いいえ」を選択しないとパスポートは発給されません。「はい」を選択した場合、これまでの経緯や20歳以降の国籍選択について聞かれ、国籍選択手続を求められることになります。

重国籍者が20歳以降何もしないまま(国籍選択をしないまま)日本に居住したらどうなる?

上記の法務省の説明通り、重国籍者は20歳までにどちらかの国籍を選択する必要がありますが、外国(二重国籍を認めている国)に居住し続けている限りは選択していなくても問題が発生することはないと思われます。一方、20歳の期限までに日本国籍を選択せずに日本に居住している場合は、外国籍を選択している(=日本国籍を喪失している)と見なされる可能性があります。そうなると外国籍のまま日本に長期居住していることになり、本来外国人が日本居住時に必要となる在留資格を取得しないまま日本に居住していることになり問題となる可能性があります。対応すべき措置としては、法務省出入国在留管理庁に相談することをお勧めします。これまでの経緯を正しく説明し日本国籍の喪失や在留資格取得手続きについてのアドバイスを受けるようにして下さい。万が一日本で外国人の身分であることを伝えずに企業と雇用契約を締結して就労している場合、在留資格のない外国人を雇用(不法就労)したとしてその企業に迷惑がかかる可能性もあるので注意が必要です。

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

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