国籍制度と外国籍を取得した人の日本国籍喪失手続き(前編)
~外国籍を取得した日本人のケース~

海外(日本以外の国々)在住者には、日本人として現地国在住のためのビザを取得して居住されている人、またはその国の国籍を取得している人がいます。米国の他、一部の国では複数の国籍を持つことが認められていますが、日本では認められていません。そのため日本人が外国籍を取得した場合、日本国籍をそのまま喪失せずに放置しておいてもその国での居住を継続する上では問題はありませんが、日本へ帰国(一時・永住にかかわらず)したり日本の法律・規制を伴う手続きを行う場合は、日本国籍の喪失手続きをみずから行う必要があります。今回はそうした国籍について紹介していきたいと思います。

なお、今回は前編ということで、外国籍を取得した日本人のケースについて紹介し、次回の後編では外国で日本人から出生した子(重国籍者)のケースを紹介します。

A 国籍制度について
~法務省のウェブサイトから抜粋〜

国籍についてはすでに多くの方がご存じかと思いますが、じっくりとその内容を確認される機会は少ないと思います。そこで国籍を管理する日本の法務省のウェブサイトから国籍についての説明部分を以下に紹介します。専門的で分かりづらい法律用語は一部表現を変更しています。※1

1. 国籍とは?

人が特定の国の構成員であるための資格をいいます。国籍という概念はどこの国にもあります。しかし、どの範囲の者をその国の国民として認めるかはその国の歴史、伝統、政治・経済情勢等によって異なり、それぞれの国がみずから決定することができます。このことから、国はある個人が他の国の国籍を有するかどうかまでは決めることができません。

   

2. 国籍に関する手続は、どこで行うのですか?

  1. 日本に住所を有する方:住所地を管轄する法務局・地方法務局
  2. 外国に住所を有する方:外国にある日本の大使館・領事館
  3. 帰化許可申請:住所地を管轄する法務局・地方法務局

   

3. 日本国籍の取得原因には、どのようなものがありますか?

日本国籍を取得する原因には、出生、届出、帰化の3つがあります。

(1)出生
・出生の時に父又は母が日本国民であるとき
・出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき
・日本で生まれ、父母がともに不明のとき、又は無国籍のとき

(2)届出

届出による国籍の取得とは、一定の要件を満たす方が、法務大臣に対して届け出ることによって、日本国籍を取得するという制度です。
・認知された子の国籍の取得
・国籍の留保をしなかった方の国籍の再取得
・その他の場合の国籍の取得

(3)帰化

帰化とは、日本国籍の取得を希望する外国人からの意思表示に対して、法務大臣の許可によって、日本の国籍を与える制度です。

   

4. 外国で生まれた日本人夫婦間の子の国籍は、どうなりますか?

日本人夫婦の子が外国で生まれた場合であっても出生によって日本国籍を取得します。しかし外国で生まれた子が、出生によって日本国籍と同時に外国の国籍も取得したときは、出生の日から3カ月以内に出生の届出とともに日本国籍を留保する意思表示をしなければ、その子は出生の時にさかのぼって日本国籍を失うこととされています。

   

5. 日本国籍を喪失するのは、どのような場合ですか?

日本国籍を喪失するのは、次のような場合です。

(1)自己の志望による外国国籍の取得

自分の意思で外国国籍を取得した場合、たとえば外国に帰化をした場合等には、自動的に日本国籍を失います。

   

いかがでしょうか?少し長くまた専門的表現だったので、十分理解できなかった人もいるかもしれません。ここで上記の点を踏まえ、外国籍を取得したもののまだ日本国籍を喪失していない海外居住者が理解しておくべき点を以下に補足したいと思います。

B 実務面からの具体的検証
~外国籍取得者は自分の状況と照らし合わせてみよう〜

日本国籍はどうなる?

上記の説明5.(1)にあるように、みずから志望して外国籍を取得した場合は自動的に日本国籍を喪失します。しかし、「自動的」とはあるものの、公文書(戸籍上)の登記内容が自動的に書き替えられるわけではありません。どういうことかといいますと、日本国籍であるということは日本に「籍」(戸籍のこと)を持つことになります(したがって、戸籍があるということは日本人としての証明になります)。外国籍を取得した場合でも自動的にこの籍が消除されるわけではなく、みずから国籍喪失手続きを行なわない限り戸籍上から籍、つまり国籍が亡くなることはありません。ここが一般の人にとっては紛らわしく、分かりづらい点になります。その結果、外国籍は取得したものの(意図の有無にかかわらず)日本国籍の喪失手続きを行なわず、戸籍を残したままの状態の人がいます。

日本国籍の喪失手続きは必要?

重国籍が認められている外国においては日本国籍を喪失しないままの状態でも特に問題はありません。ただし日本の法律上ではすでに日本国籍は保有しておらず、日本の戸籍は実際には本籍地の役所で保管されているものの、その存在はないものと見なされます。

一方、日本の法律が伴う在外日本領事館での手続き、たとえば来日のためのビザ申請、各種証明書(在留証明書など)、日本の公文書(戸籍など)の取得を行う場合は、日本人であれば日本のパスポートの提示が求められるため、外国籍であることを伝えると日本国籍の喪失手続きを要請されます。

また日本へ永住または一時的に帰国して居住する(住民登録を行う)場合は在留資格申請が必要となりますが、この場合も残ったままの日本国籍を喪失する必要があります。

喪失手続きはどこで?

喪失手続きは日本の戸籍の喪失手続きと同じなので、戸籍のある本籍地の市町村役場で行いますが、海外居住者は日本領事館でも受付してくれます。ただし領事館では届出(書類)を受け付けるだけで、その後本籍地の市町村役場へ郵送するため時間がかかります。(1~2カ月)

※1:法務省の「国籍Q&A」ページより抜粋:
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html#a02

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
ひっきりなしに持ち込まれるお客様からの国際手続きに関する多種多様なご依頼、ご相談(お悩み)を断り切れず休日返上で対応しているうちに、気がつけば(年金、日本帰国といった当初の事業以外の)あらゆる分野のノウハウを備えたオールラウンドコンサルタントに。当社で対応できないケースでも、的確な解決方法や提携先の他分野専門家を紹介します。

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