グリーン発電の障壁は高額の蓄電池 〜 大量生産だけがコスト削減への希望?
- 2014年5月19日
- 環境ビジネス
ハワイとカリフォルニアの両州は、それぞれの送電網(グリッド)に蓄電池を増やし、再生可能エネルギーで作るグリーン電力の生産と消費の拡大に対応しようとしている。ところが蓄電池は依然として高価で、代替エネルギー発電に取り組む関係者を悩ませている。
ハワイの電力大手ハワイ・エレクトリックは、明るい日光を発電に利用する半面、太陽がらみの問題も抱えている。明るい日中には自社や各家庭のソーラー・パネルから大量の電気が送られてくるが、あまりに多いと送電網のところどころに許容量を超える電気が流れ、家庭やオフィスの機器を傷める恐れが生じる。日が沈むと、今度はソーラー以外の方法で発電しなければならない。同社は現在、電気を円滑に終日供給できる蓄電技術を持った企業を懸命に探している。
カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)もその問題を以前から懸念し、州内の電力3大手(PG&E、サンディエゴ・ガス&エレクトリック、サザンカリフォルニア・エジソン)に対して2020年までに計1325メガワット(MW)分の蓄電装置を備えるよう義務づけている。
蓄電はグリーン発電の隠れた大問題であり、蓄電がうまく行けば風力や太陽光、太陽熱の発電業者は市場を拡大でき、送電網はもっと効率が上がり、電力需要がもっとも高い時間帯まで従来型の発電を延長する必要がなくなる。しかし、蓄電池は高価で、大幅に値下がりしない限り代替エネルギー発電の進歩は遅くなる。
グリーン発電支持者の一部はそれについて、単純な「規模の問題」で次世代蓄電池を大量に生産できればコストは下がると主張する。
EV(電気自動車)専業テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は最近、同社が50億ドルで建設予定の大規模蓄電池工場(ギガファクトリー)が稼働すれば、次世代蓄電池の生産コストを30%以上下げることも可能と述べた。
同工場では、テスラの2013年販売台数の10倍以上にあたる年間50万台分のEV用蓄電池が生産される予定。テスラ車の売り上げが飛躍的に伸びるまではEV用蓄電池をグリーン発電の蓄電に使う構想もあると言われる。
現在、蓄電技術には40種類以上あるが、電力会社の要求は厳しく、消費者が使うだけの電力を生産したいというのが業界の希望だ。工場や産業施設では製造工程が常に刷新されて需要が高まる傾向にあるため、それに合わせて発電能力を高めるのは簡単ではない。
しかし、蓄電量を増やせれば、電力需要の急騰で起きる大規模停電を防げるほか、電力卸値の乱高下も避けられる。
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