2024年から米国で複数の電気自動車(EV)モデルを売り出す予定のステランティスはこのほど、黒人消費者に売り込むためのコンサルティング会社として、文化の多様性と雇用機会均等を重視して活動するTKT&アソシエイツ(ケンタッキー州)を指名した。
■出遅れている販売
オートモーティブ・ニュースによると、ステランティスのキム・ハウス多文化マーケティング責任者は「TKTは、当社の提案依頼に対して洞察力のある創造的な提案をした。多文化マーケティング戦略やEV技術に関する革新的な考えも当社と一致したため、黒人が経営する黒人消費者に特化した当社初のクリエイティブ・エージェンシーとしてTKTを起用した」と話している。
自動車メーカー各社は、EVに軸足を移す上でさまざまな生い立ちの消費者に購入を呼びかける必要があるが、特に黒人やヒスパニックにどう売り込むかが課題になっている。
S&Pグローバル・モビリティーの新車登録データによると、2023年1~9月の米EV販売台数は71万7000台を超え、新車販売全体の8.2%を占めたが、このうち黒人による購入はわずか4.8%だった。23年は黒人が月々4000台程度のEVを購入しているのに対し、ヒスパニックは1万2000台、アジア系は2万4000台となっている。
黒人向けの新車販売台数は30年までに110万台に増えると予測されているが、EVの構成比はまだ明確には予測できない。S&Pのマーク・ブランド最高多様性責任者(CDO)は「黒人消費者に対する教育、直接的な情報交換、集中的な新規軸の導入が必要。これはヒスパニック系やすべての女性にとっても同じ」と語る。
■関心の高さは白人以上
消費者情報誌コンシューマー・リポーツ(CR)が22年、消費者8027人を対象に実施した全米調査で、どの非白人グループもEVの購入に対しては白人と同程度、またはそれ以上の関心を持っていることが分かっている。次に乗る車としてEVの購入またはリースを 「確実に」または 「真剣に」検討すると答えたのは、白人の33%に対し黒人は38%、ヒスパニックは43%、アジア系は52%だった。
しかし、eモビリティーの多様化を目指すコンサルティング組織EVノワール(EVNoire、フロリダ州)のシェリー・フランシス氏は「各コミュニティーに向けて行われているマーケティングや教育普及活動には、ずれがある。私たちは自動車メーカーや充電施設運営会社などあらゆるパートナーと協力し、市場参入戦略に包括性(インクルージョン)が確実に含まれるようにしている」と話す。EVノワールは、CR調査に情報提供した団体の一つ。
CR調査によると、EVの購入/リース時の懸念として全てのグループで最大だったのは充電問題だ。便利さや充電時間の長さよりも、利用可能な公共の充電設備があるかないかが何よりも大きな不安材料になっている。2番目は価格で、価格を気にする人は黒人やヒスパニックより白人やアジア系に多く、黒人やヒスパニックはメンテナンスや修理費用を心配している。
また、黒人とヒスパニックではEVに関する情報不足も大きな問題だ。フランシス氏は「全てに通用するアプローチはない。多様な消費者にEVを売り込む場合は、彼らのニーズを理解するため、異なるセグメントの消費者データを活用してデータ主導の方法を取る必要があり、その消費者にふさわしいマーケティングや教材の作成を考えることが重要」と強調する。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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