ラスベガスで開催されたIT家電見本市CESに参加した自動車業界幹部らによると、世界の自動車部品業者は、トランプ次期大統領が導入を宣言した追加関税に対する防衛策として、生産拠点をどれだけ米国に移せるか、あるいは米国に近づけるかを真剣に検討している。
◇すでに対応に着手
ロイターによると、自動車業界は、実際に関税を導入した第一次トランプ政権、さらなる関税と米国インフレ削減法(IRA)を制定したバイデン政権とすでに8年間、米国の保護主義を経験している。これらはほとんどが中国を念頭に置いた政策だったが、20日に大統領に就任するトランプ氏は世界各国からの輸入品に一律10%の関税を課し、中国製品にははるかに高い60%の関税を課すと宣言。昨年11月下旬には、大統領就任時にカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税をかけると明言している。
CES会場でインタビューに応じた自動車部品世界最大手ボッシュのポール・トーマス北米社長は「10%、20%、60%といった関税率に対しどんな手を打つか考えなければならない。当社はトランプ大統領の就任前からそのいくつかに着手している」と語った。具体例として、現在マレーシアなどで製造している汎用電子制御ユニットをすでに拠点のあるメキシコかブラジルで生産することを検討していると明かした。
トランプ氏は前回の大統領任期中、特定の国や自動車メーカーに対して関税を課すと脅して米国での生産を増やすよう促し、効果を挙げた。トヨタが2017年初めにメキシコで米国向け「カローラ」を生産する計画を発表した際には、ツイッター(現在のX)で「だめだ!米国に工場を建てるか多額の国境税を払うかどちらかだ 」と発信。トヨタは1年もたたないうちに、マツダと共同でアラバマ州に16億ドルの工場を建設すると発表した。
◇生産現地化を一層強化
大手サプライヤーは新型コロナウイルスが流行した時期、部品不足や国境税のリスクを避けるために生産を現地化して、米国の保護主義や大規模なサプライチェーン(供給網)危機に対応した。この動きはバイデン政権が22年にIRAを成立させた後、より加速した。
コンチネンタルのニコライ・セッツァーCEOによると、同社は何年にもわたって事業展開する各地域で生産現地化を進めており、他社よりも影響を受けにくいと考えられるが、それでも現地の部品を代替品に使って関税を回避できるかどうか北米のサプライヤーと話し合っており「より現地化を進めることは可能で、それが理にかなうならどこででもそうする」と述べた。
メキシコに年間約20万台の生産能力を持ち、その80%を米国に輸出しているホンダの貝原典也副社長は「関税のレベルによっては、メキシコから日本へ、あるいはメキシコからほかのどこかへ生産拠点の変更を検討しなければならないかもしれない」と話した。
電気自動車(EV)大手テスラにEV用電池を供給しているパナソニック・エナジーは、合成黒鉛負極材メーカーのノボニックスとの供給契約を含め、すでにサプライチェーンの北米シフトに取り組んでいる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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