シリーズアメリカ再発見⑧ 高みへ!
ユタ 国立公園の聖域を訪ねて

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

メサアーチからのぞいた景色 Photo © Mirei Sato

メサアーチからのぞいた景色
Photo © Mirei Sato

 
DAY 2
 「Mighty Colorado」——。地元の人はコロラド川をそう呼ぶ。

 全長1450マイル、7州にまたがる偉大な川は、もっとその価値を認められていいのではないか。「世界四大文明」には数えられないが、何千万年にも渡ってつくり出した景観のすごさはナイルや黄河を圧倒する。ロサンゼルスやラスベガスはこの川に水源を頼り、アメリカの農作物の3割も灌漑に使っている。

 ユタ州最大の国立公園キャニオンランズは、コロラド川が彫り刻んだ峡谷の芸術を鑑賞するのに最高の場所だ。メサアーチは、その「額縁」の役目を果たす。へりに腰かけて身を乗り出すと、赤茶色の崖、メサ、ビュート、プラトーが屏風絵のように広がる。

 そこからモアブへすこし戻った所にあるデッドホースポイント州立公園からの眺めは、さらに素晴らしい。コロラド川がガチョウの首のように湾曲する場所、通称「グースネック」を2000メートルの高さから一望する。濃くにごった緑色の原水はじっとして動かない。周りの大地は回廊神殿のようだ。
 映画「セルマ&ルイーズ」の最後で二人が「飛び立つ」ラストシーンは、ここで撮影された。スタントマンは気持ちよかったことだろう。

 モアブの北にあるアーチーズ国立公園には、自然がつくったアーチ状の砂岩が2000以上と世界で最も多く集まる。

 一番有名でユタ州の象徴ともいえるデリケートアーチは、駐車場から、するっと滑りそうな岩の斜面を含めて3マイル。かなりの距離を歩いて登らないと見られないが、最後の岩の角を曲がって写真で見慣れたアーチが目の前に現れたときの感動には代えられない。崖の際に丸めた粘土を無理矢理くっつけたような、不思議な自然の工作だ。

 アーチ以外にも、尖塔のようにそそり立つ岩や、今にも落ちそうに見えてバランスを保っている岩など、沢山の見どころがある。ここはやっぱり夕焼けの時間帯がいい。

 アリゾナとの州境に近いブラフの町へ移動する。宿でコロラドから自転車で来たという一行に出会い、話がはずんだ。1日140マイル走り翌日は休むという繰り返しで国立公園を回っているという。

 山の夜ふけは早く、ビールやワインを楽しんでもまだ9時だが、朝日を撮るために出ていく人たちも多いから皆早々に寝静まる。
 


 

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