シリーズアメリカ再発見⑧ 高みへ!
ユタ 国立公園の聖域を訪ねて

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 アメリカ西部のユタ州は、国立公園の宝庫だ。キャニオンランズ、アーチーズ、キャピトルリーフ、ブライスキャニオン、そしてザイオン。まるで首飾りのように並ぶこれらの国立公園には、世界でもほかに例を見ない、奇怪で美しい景観が広がる。
 州都ソルトレークシティーを発着点に、5つの国立公園と周辺のみどころを効率よく巡る旅を紹介する。(*注:情報は掲載誌発行時点のものです)

 

Courtesy of Utah Office of Tourism

Courtesy of Utah Office of Tourism

 
DAY 1
 ソルトレークシティーの北西に広がるグレートソルトレークは、国立公園を3〜4つ合わせたような大きな塩水湖だ。ここに浮かぶアンテロープアイランド州立公園が、旅の最初の目的地だ。

 アメリカでも最大規模の700頭近い野生のバッファローが生息している。大半はかたまって草を食んでいるが、何頭かのオスは群れを嫌って島の北に陣取り、ちょっと悪ガキという意味で地元の人が「ビースティ・ボーイズ」と呼んでいる。

 夏はヒマワリが咲き乱れ、「死海」で泳ごうと世界中からやって来る観光客でにぎわう白砂のビーチも、私が訪れた10月は人影まばら。ススキが揺れ、黄色い花をつけたちょっと臭いラビットブラッシュが岩の間を独占していた。車の横を、アンテロープ(枝角カモシカ)が4頭連れ立って並走し、コヨーテがその様子を丘の上からじっと見つめている。

 歴史ある牧場「フィールディング・ガー」で馬に乗った。観光客向けの乗馬といえば、1列になって前の馬のお尻を見ながら進むのが一般的だが、ここには道も柵もない。ひらけた大地を自由に走れる。

 島を出るとフリーウエーを一気に南下し、さらに東へ約5時間。夕日が沈む直前、モアブの町に着いた。モアブの厳しい自然は白人の開拓を最後まで拒み、そのために「神に見捨てられた地」と呼ばれた時代もあった。20世紀半ば、ジョン・ウェインに代表される西部劇のロケ地として栄え、「マルボロマン」の最初のCMもここで撮影された。つくりものも含めて「西部らしさ」が詰まった場所だ。

 赤く落ちる太陽がコロラド川に差し込む。そびえ立つ岩の間を、一人カヤックで下っていく男性が見えた。
 


 

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