シリーズアメリカ再発見⑧ 高みへ!
ユタ 国立公園の聖域を訪ねて

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

ナバホ族の工芸品 Photo © Mirei Sato

ナバホ族の工芸品
Photo © Mirei Sato

 
DAY 3
 ブラフの町を出て163号線を西へ向かうと、アメリカ大衆文化におけるユニークな場所が登場する。映画「フォレスト・ガンプ」で、ヒゲをぼうぼうに生やしてアメリカ各地を走り続ける主人公(トム・ハンクス演じる)が、突如走るのをやめる場所だ。ここでは誰もが車をとめて、ガンプ気分で記念撮影に興じる。

 その先の1本道はアメリカ西部の最もアイコニックな風景として愛されてきたモニュメントバレーへ続いている。ジョン・フォード監督の代表作「駅馬車」を皮切りに、西部劇、ハリウッドの大作映画、TVコマーシャルまで含めると数えきれないほどの撮影が行われてきた。

 モニュメントバレーはアメリカの国立公園ではない。先住民ナバホ・ネーションの土地にあり、ナバホ族の公園だ。ジープで案内してくれたナバホのガイドさんによると、公園には水も電気もないけれど12家族が住んでいる。空気が澄んだ夜は、手を伸ばせば満点の星空を触れそうなぐらい美しいと言っていた。

 モニュメントバレーを出て95号線を北へ4時間弱、キャピトルリーフ国立公園をめざす。

 ユタの旅の魅力は、ドライブするにつれて、車窓を流れる岩の色や特徴がどんどん変わっていくことだ。草原のような緑と茶色から、黄色と茶色へ。それに赤やオレンジが混じったかと思えば、薄紫と褐色にグレーの帯が登場。錆びた銅と赤緑のペアリングが、やがて銀と黒と赤茶に変わり、いつしか深緑と水色と薄茶の組み合わせになっている。

 キャピトルリーフに入ると、岩の色は赤茶に白っぽい緑が混じってやさしい雰囲気になった。モニュメントバレーの荒削りな美しさとはだいぶ違って、果樹や紅葉樹も見える。小川のそばの木陰から子鹿がひょっこり顔を出した。

 岩の多彩な色合いから、先住民はここを「虹が眠る場所」と名付けたそうだ。見回すと、ピンク色の岩の壁面にバーコードのような黒い模様ができている。水が岩の上を流れたときに鉄とマンガンが残って黒くしみついたもので、かつて先住民はこの黒い部分を削って岩に絵を描いた。そのペトログリフが今も鮮明に残っている。
 


 

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