エステティシャン&電気鍼脱毛士
尾崎 冨美

文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)

 高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

「最先端の知識や技能の吸収に努め 顧客の立場で、肌の悩みを解決」

 昔から、父には「手に職をつけろ」と言われていました。最後はラスベガスのベラッジオでも握っていた寿司職人の父は、「手に職さえあれば、世界中どこででも働けるんだぞ」と言っていました。しかし、私は寿司職人になるつもりはありませんでしたし、父の言葉がピンとこなかったというのが正直なところでした。

 そこで大学卒業後は、日本語と英語のバイリンガル能力を生かして商社に就職しました。ところが、実際に就職してみると、バイリンガルはもちろん日本語も英語も話せるトライリンガルの中国人もいたりして、果たして「外国語がしゃべれるだけでは仕事に十分なスキルとは言えないのではないか」という疑問も生じてきました。仕事内容は日本とアメリカのリエゾン的なものでしたが、別の可能性を探るため、日本の大手の化粧品会社のアメリカ法人に転職しました。

 ここで初めて美容関係の仕事に携わりました。日本で3カ月、研修も受けたのですが、この時に「美容の仕事は面白い。自分に合っているかもしれない」という思いが芽生えました。アメリカに戻ると、今度はカリフォルニア州のエステティシャンの資格を取るために学校に通い始めました。きっかけは上司の「冨美さんの手は大きいから、エステをやってもらうと気持ちいいと思う」という言葉でした。それまで、美容の資格と言えば美容師資格しか知らなかったのですが、エステティシャンの資格もあると知り、挑戦することにしたのです。

 試験を受けるには600時間の受講が条件なので、昼間は仕事、夕方から夜間まで学校という生活を9カ月ほど続けました。その後、米系の有名スパでエステティシャンとして半年間働きました。ここでは、学校では学べないマッサージ技術を身につけることができました。この時にエステティシャンには2タイプあると気づきました。一つは、お客様が一見さんであっても、とにかくマッサージしている時間だけに集中するタイプ。もう一つは、お客様と向き合って、その方のお肌の悩みなどを解決しようと取り組むタイプ。私は明らかに後者です。

即効性とプラスαのサービスも意識

 今の場所を借りて独立したのが2年前です。会社員時代は、自分でこうしたいと思っても、会社の都合などで思い通りにはいきませんでしたが、今は自分のやりたいようにできているので、苦労は感じません。それに、施術する側が精神的に充実していることが、お客様を癒す上では必須条件だと思うのです。

 エステティシャンに向いているのは、やはり何と言ってもお客様の立場に立てる人だと思います。私も時々、他のサロンに行って施術を受けるのですが、受ける側になるとよくわかります。エステティシャンも、顧客がどうしてほしいかをしっかり把握して施術する人と、ただこなすだけの人に分かれるんですね。施術を受けながら、私自身も参考にできる要素は吸収するように心がけています。

 私のサロンは、ほぼ口コミです。私が取り上げられた記事を見た人や、顧客の紹介などで問い合わせをいただきます。あとは自分で積極的に交流会に出かけて、たくさんの人と直接会うように努力しています。

 業界の先行きに関しては、これまでより明るいのではないかと見ています。財布の紐をぎゅっとしめていた人も、月1回のお肌のメンテナンスに出かけようという余裕が出てくるのではないのでしょうか。そういうお客様に応えるために、常に最新の知識や技能を身につけることは必要ですし、今のエステはかなりの即効性が求められているので、そこも意識しつつ、プラスアルファのサービスを提供していけるように努めていきたいです。

 最近のグッドニュースは全米の美容学校で採用されている教科書の監修に参加できたことです。10年後には美容の本の執筆や、美容学校で後輩の指導に携われたらいいなと希望しています。もちろんサロンも経営して、施術も続けていきます。
Esthe Ozaki

My Resume
●氏名:オザキ・フミ(Fumi Ozaki)
現職:エステティシャン、電気鍼脱毛士、メイクアップアーティスト、公認エステティックインストラクター(“O”de Kirei代表)
●前職:商社、日系大手美容関連会社勤務
●取得した資格:Licensed Esthetician(State of California/Nevada), Licensed Electrologist (State of California), Esthetician Instructor Training Certification
●ビジネス拠点:ロサンゼルス郊外レドンドビーチ
●その他:神奈川県生まれ、ロサンゼルス郊外オレンジ郡育ちの日英バイリンガル。130年以上の歴史がある鍼による永久脱毛サービスやエステティックサービス、メイクアップサービス、法人向けコンサルティング、エステティシャン技術向上指導、美容関連業務通訳・翻訳などに幅広く携わる。全米の美容学校採用の教科書MILADY2014年版の監修も務める。
●ウェブサイトなど:www.FumiOzaki.com

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

Universal Mobile
資格の学校TAC
アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用
Universal Mobile

注目の記事

  1. オンライン上のプライバシーに関する問題は思ったよりも複雑で、デジタルプライバシーを保護するこ...
  2. 2021年6月8日

    産後うつ
    文章を書く時、明確なルールを自分に課している。それは家族のこと、仕事のことは一切書かないとい...
  3. 2020年6月に高校を卒業したニナは、その年の秋に自宅から車で40分ほどのカリフォルニア大学...
  4. バイデン大統領は2021年3月、新型コロナウイルス経済対策法案に署名し同法が成立しました。米...
  5. フロリダ州の南端に位置するエヴァーグレーズ国立公園は、北米最大の湿原地帯。フロリダ半島の真ん...
  6. 幼児期 “何を読むか” ではなく “これを読みたい” が重要 「この絵本、楽しそう。うちの...
  7. 自動車保険への加入はアメリカのほとんどの州法で義務付けられていますが、the Insuran...
  8. ニナが進学したカリフォルニア大学からは、「ペアレントナイト」といったタイトルのバーチャルイベ...
ページ上部へ戻る