シリーズアメリカ再発見㉕
シカゴ名物球場アニバーサリー

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

レイク・ミシガンの湖岸を走るレイク・ショア・ドライブの夜景は絶品。「Are you on LSD?」(LSDを運転中?/ドラッグやってるかい?)のジョークもある© City of Chicago

レイク・ミシガンの湖岸を走るレイク・ショア・ドライブの夜景は絶品。「Are you on LSD?」(LSDを運転中?/ドラッグやってるかい?)のジョークもある
© City of Chicago

 ツアーに同行していた、シカゴのスポーツに詳しいガイドのテリー・ソロモンさんは、アメリカ人とスポーツの関係を、こう説明する。

 「アメリカにはヨーロッパのように長い歴史がないし、文化的な英雄が何人もいるってわけじゃない。その代わり、私たちのヒーローは、スポーツ選手なんだ。ウォルター・ペイトンやマイケル・ジョーダンのようにね。スポーツから、我々はすごくたくさんのことを得ている。お金や娯楽、人との絆、誇り、アイデンティティーも」

 ゴールド選手は、「シカゴのファンは、クレイジーで、素晴らしいよ。シカゴではいろんなチームが何度も優勝している。スポーツはこの街の心臓みたいなものなんだ」と言っていた。

 その通り、プロスポーツのファンにとって、シカゴは最高の街だ。野球(カブス、ホワイトソックス)、フットボール(ベアーズ)、バスケットボール(ブルズ)、アイスホッケー(ブラックホークス)、サッカー(ファイヤー)。個性あふれるチームが入れ替わり立ち代わり、ファンの人生にプラスアルファの興奮と楽しみ、期待と絶望をもたらしてくれる。

 軟弱者にはマイナス15度の生観戦はつらいだろうが、スタジアムに行かなくても、シカゴの街にはスポーツバーが山ほどある。名物のディープディッシュピザに地ビールさえあれば、テレビの前で1日中座っていても飽きることはない。

 ◆ ◆ ◆

 最近のプロスポーツのスタジアムの名前は、命名権をもつスポンサーの都合でころころ変わる。そんな中でソルジャーフィールドもリグリーフィールドも、長い間、ファンが親しんできた名前を保ち続けている。
 しかし変化の波は少しずつ押し寄せている。

 カブスは最近、リグリーフィールドの改修計画を発表した。外野席に広告用の看板を増やし、大きなスコアボードも設置する。位置やサイズによっては、ルーフトップは眺めを失い、営業できなくなる。球場の印象もだいぶ変わってしまうかも知れない。

 カブスに呪いをかけた「Billy Goat Tavern」は、かつてミシガン・アベニューとシカゴリバーが交わるところにある、地下の薄暗いバーだった。シカゴの2大新聞社「シカゴ・トリビューン」と「シカゴ・サン・タイムズ」の本社ビルの中間地点で、夜勤や朝番明けの新聞記者がたまり場にしていた。
 今もその店は営業しているが、ビリー自体はチェーン化した。名物のチーズバーガーは、今やシカゴの空港のフードコートでも食べられる。サン・タイムズは度重なるリストラで名物記者を次々に失い、川べりにあった本社ビルは2004年に壊された。跡地には、高級ホテル&コンドミニアムが建っている。


取材協力/Special thanks to Choose Chicago

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