シリーズアメリカ再発見㉕
シカゴ名物球場アニバーサリー

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

シカゴ・カブスの本拠地、リグリーフィールド© City of Chicago

シカゴ・カブスの本拠地、リグリーフィールド
© City of Chicago

ヤギの呪いもなんのその!
小熊たちが夢を見るWRIGLEY FIELD

 リグリーフィールドは、MLBの中で、フェンウェイパーク(ボストン・レッドソックスの本拠地)に次いで2番目に古い球場だ。1914年に、1万4000席の野球場として完成した。
 ブリーチャーと呼ばれる階段式の飛び出したような外野席、ボールとストライクのカウントを手動で示すスコアボード、外野にからまるツタ……。リグリーならではの特色はいろいろある。一番ユニークなのは「ルーフトップ」と総称される、球場外の「特別観覧席」だ。

 リグリーフィールドは、住宅街のド真ん中にある、アメリカでも珍しいスタジアムだ。ニューヨークのヤンキースタジアムも市街地にあるという点では同じだが、リグリーは周りのアパートとまさに隣接している。そのアパートが、それぞれ屋上に座席を設置して「店」を営業。観戦チケットを売り、食べ物や飲み物も販売する。それがルーフトップだ。通りを隔てているとはいえ、座席はまるで球場外野席の延長のよう。試合を見て雰囲気を味わうのには十分だ。
 球場の収容人数は4万人強で、他球場に比べて特段小さいわけではないから、小じんまりした印象を抱くのは、レトロな雰囲気のせいか。

 ここリグリーでも、名選手が私たちを迎えてくれた。「ミスター・カブ」こと、ファーガソン・ジェンキンスさん。1965年にメジャーデビューし、83年に引退。シカゴ・カブスで通算8年活躍した投手だ。カブスから初めて、そしてカナダ生まれの選手で初めて、サイ・ヤング賞を受賞。91年に野球の殿堂入りを果たしている。
 リグリーフィールドの思い出を聞くと、「ブリーチャー席が小さくて、照明灯がないからデーゲームしかできなくてね。最初のナイターは88年(引退後)でした」と答えてくれた。

 カブスといえば、「ヤギ(goat)の呪い」なしには語れない。
 チーズバーガーを出す小さなバー、「Billy Goat Tavern」のオーナーは、いつもペットのヤギ、マーフィーを、カブスの試合に連れて行っていた。しかし1945年のワールドシリーズ第4戦で、カブスのオーナーが「におい」を理由に入場を拒否。これに怒ったマーフィーが呪いをかけ、それ以来カブスは、優勝はおろか、ワールドシリーズ出場さえできなくなった——という伝説だ。
 事実、マーフィー退場の翌日からカブスは3連敗して優勝を逃した。2003年にリーグ優勝とワールドシリーズ進出に王手をかけたが、あとアウト5つのところで突如、考えられないエラーが。そこから逆転されて負け、続く試合も落として敗退した。最後にワールドシリーズを制覇したのは1908年だ。

 ジェンキンスさんは、「カブスは長いこと優勝していないから、ファンの期待はとても高い。今のチームは若い選手がたくさんいて、みんな頑張っているから可能性はあるんじゃないかな」と前向きだ。
 キャンプなどで若手投手の調子も見るという。日本の選手について、「藤川(球児)は、いいものをもっていると思うね。精神的に強いし、肉体的にも賢い。耐久性があるピッチャーだと思う。今はけがをしているけど、もうちょっとしたら出てくるんじゃないか」。テキサス・レンジャーズでも3年プレーしたジェンキンスさん。「ダルビッシュもすごくいいピッチャーだね」と言い添えた。

 私がこのツアーに参加したのは4月のシーズン開幕直後だった。それから約2週間後の、4月23日。カブスは、リグリーフィールド100周年を祝う式典と、記念試合を行った。
 試合開始前に、カブスの往年の名選手が勢ぞろい。もちろんジェンキンスさんも登場した。待ちに待って入場したファンは、幾つもの記念グッズをもらい、ポークチョップサンドや時代もののカクテルなどを楽しみ、7回表が終わると名物の「テイク・ミー・アウト・トゥ・ザ・ボール・ゲーム」を力いっぱい歌った。そして……。

 5対2とリードして迎えた9回、2アウト、勝利まであと1人。内野手のエラーからドタドタと5点を失い、まさかの黒星――という、記念日にふさわしい(?)負け方も堪能した。

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