シリーズアメリカ再発見㉗
イリノイ横断 ルート66

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

Photo © Mirei Sato

ポンティアックのメモラビリアを展示する博物館
Photo © Mirei Sato


Pontiac
ポンティアック

 ジョリエットからさらに南西にくだると、ポンティアックに着く。イリノイのルート66のすべてを集めた博物館があり、街のあちこちにルート66をイメージした壁画やオブジェが飾られている。

 人口は1万人だが、ハーレーに乗ったツーリング軍団や観光客が常にこの街を訪れる。「ルート66で食べています」と言わんばかりの場所だ。

 博物館の前には、改造したスクールバスが停まっている。ルート66に魅せられてしまったボブ・ウォルドマイヤーさんという変わり者が、40年にわたってこのバスの中に住んでいた。ベッドにキッチン、シャワーもある。今も時速40マイルは出るらしい。

 博物館の階上へ行こうとして、違う部屋に迷い込んでしまった。星条旗や軍服が並ぶ、愛国心に満ちた部屋。第2次大戦の遺品も見える。アメリカの軍功を讃える博物館だった。さっさと退散したほうがよさそうだと思ったところで、3人の退役軍人らしき人たちに囲まれ、「日本人ですか」と聞かれた。「だったら見せたいものがある」

 戦争の遺恨かと思いきや、彼らが持ってきたのは、茶色く古びた小さな手帳だった。写真がいっぱいはってあって、日本語で「母」「姉」「軍隊の同僚」などと書き込まれている。恋人なのか、名前のない女性の写真も何枚かあった。日本兵が、戦地で大切に身につけていたのだろう。「アメリカ兵が見つけて持ち帰った。持ち主に返したいが、だれも日本語が読めないし、日本に知り合いもいない」と言うのだった。

 ページをめくったが、肝心の持ち主の名前は見あたらない。カギになりそうな地名も書いていなかった。戦死したのかは分からないが、これを見て感激する遺族や子孫は日本のどこかにいるに違いない。

 「日本に持って行って探してくれませんか」と頼まれた。しばらく考えたけれど、私が持ち帰るよりは、ここに置いておいた方がいいのでは。誰かが私のようにふらりと立ち寄って、何かの縁で届くこともあるかもしれない。そう思って、そのままにした。

 ポンティアックといえば、GM(ゼネラル・モーターズ)の代表的なブランドだ。自動車工場があるのはミシガン州ポンティアックだが(*2010年に閉鎖)、ここにはポンティアックの車や部品、関連メモラビリアを集めた博物館がある。

 50年代以降、高度経済成長を謳歌するアメリカで、車は「移動手段」以上のものになった。スポーティーでハイパフォーマンス、かつ手が届く値段のポンティアックは、若者の間で大流行。特にGTOに人気が集まった。

ポンティアックの車を集めた博物館のディレクター、ジム・ダイさん Photo © Mirei Sato

ポンティアックの車を集めた博物館のディレクター、ジム・ダイさん
Photo © Mirei Sato

 「60歳以上のアメリカ人にとって、ポンティアックは思い出を呼び起こす、特別な車なんですよ」。博物館ディレクターのジム・ダイさんは言う。レアもののポンティアックを21台も所有しているジムさんだが、16歳で最初に買った車はGTOだったそうだ。

 GMの衰退でポンティアックの製造は中止となり、ミシガン州ポンティアックは廃墟と化した。そのことに触れると、「あんなに売れている車だったのに、なくなってしまったなんて…。工場が閉鎖したのも悲しいこと。まったく理解できませんよ」と、本当に寂しそうだった。

 もともとポンティアックはオタワ族のインディアンのチーフの名前で、イギリス軍に抵抗した強い戦士。車も街も、それにちなんで名づけられた。

 軽蔑し、征服したインディアンの名前を、自由と新天地、パワー(力)の象徴として、車や鉄道、スポーツチームの名前に使うところは、いかにもアメリカらしい。


旅の参考情報

Route 66 Association of Illinois Hall of Fame and Museum
il66assoc.org/attraction/route-66-association-hall-fame-museum

    

Pontiac Tourism
www.visitpontiac.org


 


 

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