第83回 嫌われたくない飼い主
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2015年8月5日
日本の我が家は、6人家族プラス犬一匹でした。6人もいると「愛犬が誰を一番好きか」という競争になります。一番好かれていると自信たっぷりだったのは長姉。愛犬プルートは、長姉を見ると、尻尾ふりふり大喜びです。それもそのはず、彼女はプルートに対して、厳しい顔を見せたり、しつけに関わったりしたことはなし。そんな局面に立つと、誰かに「叱って~」「なんとかして~」と逃げの構えで、自ら立ち向かわず、常に優しい飼い主としての立場を守っていました。しかし、長姉が我が家の愛犬といい関係を築いていたか? となると疑問です。今回は、「愛犬に好かれたい」と願うばかりに取っている、飼い主の間違った行動についてお話しします。
甘やかしのディスペンサー
愛犬がそばにいてくれるだけで私は幸せだから、溢れんばかりの感謝の気持ちを込めて、贅沢三昧、やりたいようにさせている。あのまん丸でつぶらな瞳で見つめられたら、なんでもハイハイと愛犬の大好きなトリートをあげたり、自分の食事まで寛大に分け与えたりもする。犬の大好きなトリートを使って気を惹こうと必死な飼い主もいます。
「駄目!」と叱った時に見せる、あの悲しそうな顔を見るとなんとも可哀相で、どうしてもしつけられない、また、愛犬の間違った行動を正すと、犬に「嫌な人間だ」と思われるとか、やりたいようにしている行動をコントロールするのは「意地悪」と捉えてしまう人もいます。「愛犬に嫌われたくないから」と、犬のしたいようにさせていると心当たりがある人はいませんか?
犬と上手な関係を作れる人は、犬の気を惹こうと一生懸命媚びたりしません。なぜなら、犬と関係を築くために、人間が媚びる必要がないからです。異常に好かれようと努力しても、犬は信用できない人は分かります。反対に、犬が「この人!」と思えば、必ず犬の方から愛情表現を示してきます。
Tough Love
私が学校の教師をしていた時に、子供たちに「私たちが悪いことをしていたらもっと厳しく叱ってください」と言われたことがありました。正直、驚きましたが、子供たちがそこまで上からのガイダンスの必要性を感じていることに感動したものです。まさか犬が「問題行動していたら、きちんとしつけてください」と催促してくることはありませんが、即時に「正す」「褒める」の繰り返しで、きちんとしたガイダンスを提供すれば、どんどん犬が飼い主を信頼するようになり、尊敬できる存在として接してくるのです。
本当の意味の愛犬への愛情とは、いつでも、どんな時でも安心し、ついていける飼い主がそばにいてあげること。信頼され、尊敬される飼い主であること。そう思われるためには、犬に不可欠な質と量の運動を提供し、犬が立派な社会の一員となるためのしつけをし、そして、健康管理をすること。それこそが、愛犬をこよなく愛しているということではないかと思います。そうなって初めて、犬は「この人!」と感じ、飼い主は本当の意味で犬から愛されるのです。
次回は、「動物病院にて」と題し、獣医師やグルーマーなど、犬の専門家たちが困っていることについてお話しします。お楽しみに!
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