
ナパ観光の目玉ワイントレイン
Photo © Yuki Saito
全米からカリフォルニアのワイナリーを訪れる旅行客は、年々増える一方だ。 夏から収穫期のピークには、 ナパバレーのホテルやレストラン、そしてワイナリーは家族連れやカップルで大変な賑わいを呈する。仕事や取材に通う身としては、道路の混雑やホテルの確保にうんざりしながらも、地元にお金を落としてくれる旅行者には感謝している。
ワインツーリズムでもっとも成功しているビジネスモデルはナパバレーだ。ナパを世界的なワイン地域に押し上げた、代々の現地のビジネスマンの先見の明と、今もこれを踏襲し、更にビジネスを発展させている頭の良い「仕掛人達」の存在がある。ワイナリーの成功を、ツーリズム(ホテル、イベント、レストランなど)の盛況に結びつけている訳だ。
20世紀(といってもほんの15年前までだが)のナパにはニューヨークからよく通った。いまでもそののんびりとした雰囲気がなつかしい。現在では高級ワインに押し上げられたワイナリーも、当時は気ままにふらっと立ち寄ると、ワインメーカー(オーナー)自らが歓迎してくれ、簡易なカウンターで様々なワインをごちそうしてくれたものだ。勿論、無料で。
ところがいまは、どこのワイナリーでも、しっかりとテイスティング料金をチャージする。大抵20ドルくらいだが、その場でワインを購入すると返金してくれるシステムが多い。とはいえ、ワイナリーで売るワインの値段は、業界の慣例で、一番高い小売価格と同等となっている。つまり、ワイナリーで買うワインが一番高いことになる。このメカニズムについては後日レポートするが、自社のワインを売ってくれる業者(スーパーや小売店)より低い価格にすると、彼らの業務を邪魔する競争相手と見なされることであろうか。ちなみに、せこいワイナリーなどは、ワインテイスティングの際に、勝手につまみやランチを押し付けてきて、法外な(75~125ドル)値段を要求する。

予約制のワイナリーが増えている
Photo © Yuki Saito
以前は、予約無しにぶらっと立ち寄れた高名なワイナリーも、今では事前に予約が必要だ。もっとも、これには様々な事情がある。既に有名になったワイナリーや高級品となったワインは、実際に購入意思のある訪問者を選定したい。わざわざ予約をいれる相手なら、一見よりも無難そうだ。
更に後発の新ワイナリーは、古くからあるワイナリーと違って、既に交通渋滞などが問題になり始めた時期にワイナリーライセンスを取得したので、お上から「交通規制」を受ける羽目になった。これは、ワイナリーの近隣住民から文句が出てワイナリー経営に差し障りがでないように、業界が自粛した結果だ。要は一日の訪問は何人(何件)までという具合に。もっとも裏道はある。ワイナリーに着いたら、外から電話をすれば、「予約したことになる」というわけ。
とはいえ、やはり現地に行ってその場でワインを味わうことは、意義がある。まず、ワインがフレッシュである。これはトラックで運送され、倉庫で管理された同じカリフォルニアワインを、例えばニューヨークで味わってみると、違いが分かる(もっともボトルショックを経て、きちんと管理されているワインなら問題はない)。また、故ロバート・モンダヴィ氏など地元の名士達が、廃れていた旧ナパ市街を復興したお陰で、サンフランシスコから小一時間で着くナパ市に、沢山の新しいホテルや質のよいレストランが登場。足回りがぐっと便利になり、チョイスも充実した。今では600件といわれるワイナリーも、大小様々な趣があり、更に集客力を増している。
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