第31回 ディスカバー、リバモアバレー(Discover Livermore Valley)
文&写真/斎藤ゆき(Text and photos by Yuki Saito)
- 2015年8月5日
ベイエリア至近距離で、歴史深いワイン地域といえば、リバモアバレー(以下LVと省略)だ。その中心地リバモアまで、サンフランシスコから車でほんの40分。もう一つの主要都市、プレゼントン(Pleasanton)までなら、便利なことに通勤電車直行でやはり40分で行ける近さだ。
にもかかわらず、観光客や業界人の足はもっぱら北のナパ、ソノマに集中し、なかなかリバモアに向いてくれない。というのが、LVワイン生産者協会の悩みである。その理由は、馴染みのある有名銘柄が少ないこと、地理的にSF内陸部のベッドタウンとしてのイメージが強いことであろうか。現地最大手のウェンテ(Wente Vineyards)は、国内生産量でトップ50位内にランクされるワイナリーだが、輸出市場に注力してきたこともあり、国内での知名度はモンダヴィ、ジャクソンファミリーなどに比べると、あまり高いとはいいがたい。
既にLVには50の大小ワイナリーが存在し、美しいゴルフ場や、質のよいレストラン、割安なホテルも完備されている。そういった実情を知ってもらおうと、LVワイン生産者協会がワインライター向けに、3日間の視察取材を企画、筆者も招聘された。
準備された宿舎はプレゼントンの目抜き通りにある、格調高いローズホテル。小さなメインストリートには、可愛らしいブティックやレストランが並び、これなら日帰りせずに、一泊しても良いという気持ちにさせてくれる。これまではリバモア市内のホテルチェーン(マリオット系列など)に泊まり、ウェンテ所有の美しいゴルフ場でプレイした後は、敷地内にある質のよいレストランで夕食というのが、筆者の定番であった。正に、ウェンテ一色であった訳だ。今回案内されたプレゼントンルートや、リバモア市内のナイトスポット(ワインバーなど)も、割高のナパなどに比べるとリーズナブルでなかなか魅力的であった。
取材は、ウェンテ家五代目当主、キャロリン氏を中心に、大小のワイナリーオーナー達が一堂に会す夕食会で始まった。同氏は、米国ワイナリーを統括するWine Instituteの現会長(持ち回り制)であり、主席醸造担当をつとめる若い甥のカールは、地元ワインメーカーのリーダー的な存在でもある。ウェンテ家は代々、LV 地域の自然保護に私財を投入し、また新興ワイナリーの立ち上げや技術指導に深く関わってきた。それはLV振興が現地プレーヤーすべてのメリットになることを物語っている。
興味深かったのは、翌日行われたLVのテロワールについてのレクチャーで、一般に誤解されている「LV=暑い内陸部=大量生産ワイン」という図式を、気象資料と地域図を基に差別化したことであろうか。実際きちんと検証すれば、LVはより内陸部のセントラルバレーとは一線を画す、海からの風や霧が届く地域であり、気候的にはナパバレーに近いといえる。そのあとに訪れたブドウ畑の高台に立ち、LVを一望して納得した。
LVは主に、カベルネ、シャルドネ、プテットシラーやソービニョンブランといった人気品種を生産。価格的には、ナパ、ソノマに比べると割安だが、なかにはスティーヴケント のリーネッジ(linagewine)という200ドル相当の高級ワインもある。LV生産者協会のサイトに詳細があり、一度気軽に立ち寄ってみることをお勧めする。
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