シリーズ世界へ! YOLO⑲クロアチア紀行
森とワインと国境と…

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

パプク国立自然公園のハイキングトレイル Photo © Mirei Sato

パプク国立自然公園のハイキングトレイル
Photo © Mirei Sato

DAY 1

ザグレブ(Zagreb)

ポーツェガ(Pozega)

クロアチア共和国の首都、ザグレブの空港に降りたのは、もう夜遅い時間だった。大雨の中、3時間ドライブして、小さな村に着いた。クロアチア東部に広がるスラボニア地方、ポーツェガという村だ。
道中は真っ暗闇だった。ときどき雷が鳴り、白い稲妻に、教会の塔や民家の屋根が浮かび上がる。それ以外は何も見えず、どんな土地なのか見当がつかなかった。

宿にチェックインすると、そのまま食堂に案内された。奥から、その晩の夜勤担当者らしき男性が出てきた。
「遅いので簡単なつまみしかありませんが…」
申し訳なさそうに言って出してくれたのは…。ブタ、ブタ、ブタ。何種類ものソーセージと、チーズの盛り合わせ。山盛りのパンに、手作りのジャムとバター。そしてワイン。ブタの脂肪を揚げた珍味、シュワルツ(cvarci)も。脂肪にハーブとスパイスを混ぜたパテまで出てきた。
頼んでもいないのに、次から次へ、食卓にご馳走が広がった。深夜1時を回っていたが、あまりの美味しさに、むしゃぶりついた。

ワインを飲み終わる頃、小瓶にはいったお酒の群れが出てきた。スリーボビッツア(slivovitza)という名の、プラムを使ったブランデーだ。クロアチア流「グラッパ」か。うわー、強い。しかし美味しい。

空港から運転してきてくれたガイドのサーシャさんは、「食後の消化の手助けにいいですよ。よく眠れるし」と言って、ぐい飲みしている。深夜過ぎの「ブタ祭り」の消化にどこまで効くのかは微妙だなと思ったが、よく眠れるには違いない。

クロアチア料理についての予備知識もなく来てしまったが、ここスラボニア地方ではブタが主食なのだそうだ。特に、クーラン(kulen)というソーセージは毎日のように食卓に上がる。
サーシャさんいわく、ひと昔前まではどこの家でも食用にブタを飼っていたという。
「けっこう簡単ですよ、脳のあるポイントを針でひと突きすればいいんでね」。スリーボビッツアを飲みながら、ブタの上手な殺し方を教わる羽目になった。

1

2 3 4 5 6 7 8

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 2023年2月14日

    愛するアメリカ
    サンフランシスコの町並み 一年中温暖なカリフォルニアだが、冬は雨が降る。以前は1年間でたった...
  2. キルトを縫い合わせたような美しい田園風景が広がるグラン・プレ カナダの東部ノヴァスコシア州に...
  3. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
  4. 九州より広いウッド・バッファロー国立公園には、森と湿地がどこまでも続いている ©Parc nati...
  5. 2022年12月9日

    住みたい国
    熊本県八代市の「くまモンポート八代」で 8月の終わりから9月中頃にかけて、私とニナは日本に飛...
  6. 2022年12月7日

    日常の些事
    冬の落ち葉 年齢を重ねると、だんだんと感動が薄くなるとはよくいわれる。ほとんどのことは過去に...
  7. 2022年12月6日

    美酒と器
    酒器の種類 酒器にはさまざまな素材、形のものが存在する。適切な器を選ばないとお酒本来...
  8. 契約上のトラブル 広範囲にわたる法律問題を扱う弊社にはさまざまなお問い合わせがありま...
ページ上部へ戻る