シリーズ世界へ! YOLO⑲クロアチア紀行
森とワインと国境と…

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

パプク国立自然公園の、美しい木立 Photo © Mirei Sato

パプク国立自然公園の、美しい木立
Photo © Mirei Sato

ハイキングのあとは、クティエボというクロアチア最大生産規模を誇るワイナリーへ。
1232年創業。クロアチア最古というワインセラーで、特産の白ワイン、グラシェビナ(Grasevina)をいただいた。

案内してくれた、ソムリエのデラーゴさんによると、このワインセラーにはロマンチックな逸話がある。ハプスブルグ帝国の女帝マリア・テレジアが、ポーツェガ生まれの兵隊に恋をした。このセラーを、愛人との密会の場に使っていたそうだ。

クロアチアのワインづくりの歴史は長い。しかし、フランスやイタリア、スペインに比べると、国際的な知名度はまだまだだ。その分、将来性があるとも言える。クティエボのグラシェビナは、最近日本にも輸出されている。

ランチには、「酔ったコイ」と呼ばれる、スラボニアの名物料理を食べた。川魚のコイを、ワインで煮込んでパプリカで味付けしたスープだ。真っ赤な汁に、脂がのったコイ。パスタと一緒に食べる。ああ美味しい。

コイ料理なんて、ずいぶん昔に日本で食べたきりだ。アメリカもいろいろ旅したけれど、レストランのメニューでコイを見かけたことはない。せいぜいナマズとザリガニどまり。
「クロアチアの人もコイを食べるんですねー」。やたらに感動していると、スープだけでなく、オーブンで焼いたコイも出してくれた。大好きなナマズよりもフレーバー豊かに感じた。

◆  ◆  

 夜、ポーツェガの村の宿に戻ると、レストランの奥から音楽が聞こえてきた。
5〜6人の若者バンドが、タンバリンやギター、アコーディオンを奏でながら大声で歌っている。

スラボニアの田舎に伝わる、ベチャラツ(becarac)というジャンルの伝統音楽だそうだ。ユーモアたっぷり、アドリブを交えて、日々の生活を歌う。仕事の愚痴だったり、恋人のことだったり。「アメリカのラップミュージックみたいなものですね」と、宿の人が教えてくれた。

テーブルに座って聴き入っているのは、壮年の男性だ。お酒をぐっと飲み干すと、いきなりグラスを床に投げつけた。
え? ウェイターがすすーっとやってきて、ホウキでさっとかき集め、消えていく。誰も何も言わず、音楽も続いている。えー??

私が驚いていると、宿の人が「あの人はお金持ちのビジネスマン、うちの常連なんですよ」とささやいた。時々ここへ来て、お気に入りのバンドを呼んで、お酒を飲み、グラスを割ってストレスを発散していく。グラスもお代に入っているから宿の人も気にならない、ということらしい。いやはや、愉快。背後でガチャーンとまた音がした。

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