第5回 「ブルースのルーツを訪ねて」
ミシシッピ州

文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)

グラミー・ミュージアムでミシシッピ州出身者の名演奏が聞けるコーナー
Courtesy of GRAMMY Museum® Mississippi – photographer: Rory Doyle

ブルースの誕生は
綿花畑の中から

広いアメリカ、こんなところがあったのかという旅先を紹介していく本シリーズの第5回はブルースの故郷ミシシッピ州。温暖な気候で綿花が育つアメリカ南部州のなかで、ミシシッピ州は、19世紀には黒人奴隷労働力が支える綿花の大プランテーションが広がっていた。綿花畑の辛い労働で黒人たちが歌っていた音楽が元になって生まれたのがブルース。州内にはマディ・ウォーターズやサム・クック、B.B.キングなど数々の伝説的なアーティストの足跡をたどれる「ミシシッピ・ブルース・トレイル」があり、いわれのある場所を示すブルーの標識が200ほども立っている。

むせぶようなギターの響きと魂に届く深い声、誰でもああこれこそブルースと思えるマディ・ウォーターズの音楽。彼の育ったクラークスデールの町には、「デルタ・ブルース・ミュージアム」があって、館内に彼の育った家が再現されている。この伝説的なミュージシャンは、当時、綿花畑の小作人として働き、どちらかというと掘っ立て小屋という表現がふさわしいこの家のポーチで歌っていた。そこを、ブルース・シンガーを探す旅で立ち寄ったアメリカ議会図書館のディレクターにして著名な民族音楽研究家アラン・ローマックスに見いだされたのが、最初のステップだったという驚くべき話を聞く。

クラークスデールには、ギタリストのロバート・ジョンソンがギターテクニックと引き換えに魂を売る取引を悪魔としたという「クロス・ロード」や、モーガン・フリーマンも経営者の一人というライブハウス「グラウンド・ゼロ・ブルース・クラブ」もある。ブルースファンによる無数の落書きで埋め尽くされた壁、今もここでは毎日のように、熱いブルースのライブが開かれている。

ミシシッピ州デルタ地帯で生まれたブルースの起源が分かるミュージアム
Photo © Michiko Ono Amsden

ブルースの伝説
過去から未来へ

マディ・ウォーターズの生まれたローリングフォークあたりには、今でも綿花畑が広がり、コットン・ジンという巨大な綿繰り機を備えた工場から、綿花の塊を州外・国外へも出している。また、南部料理に欠かせないキャットフィッシュ(アメリカナマズ)の養殖池には、1エーカーに4万匹ものナマズが泳いでいる。ご馳走になったキャットフィッシュのフライは、白身であっさりしていて驚くほどおいしかった。

ローリングフォークから1時間ほどのクリーブランドには、アメリカ国内でLAとここしかない世界的に有名なグラミー賞のミュージアムがある。2016年にオープンしたまだ目新しいミュージアムでは、同じ曲がLPレコードからカセットテープ、CDとどのように音が違うか聞くことができたりと体感型展示が面白い。グラミー賞の歴史やミシシッピ出身であるB.B.キングらの足跡などを通して、ブルースそして音楽がミシシッピ州の誇りであり魂の歴史であることが感じられるミュージアムだ。

壁からブルースが聞こえてきそうなグラフィティ。クラークスデールの町で
Photo © Michiko Ono Amsden


■ ミシシッピ・ブルース・トレイル Mississippi Blues Trail

http://msbluestrail.org/

■ デルタ・ブルース・ミュージアム Delta Blues Museum
http://www.deltabluesmuseum.org

■ グラウンド・ゼロ・ブルース・クラブ Ground Zero Blues Club
http://www.groundzerobluesclub.com

■ グラミー・ミュージアム ・ミシシッピ Grammy Museum Misssissippi
http://www.grammymuseum.org/explore/grammy-museum-mississippi

*ミシシッピ州、州都のジャクソンからクラークスデールは約100km。

取材協力 ミシシッピ・リバー・カントリーUSA https://mrcusa.jp

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

ライタープロフィール

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ。旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、翻訳多数。日本旅行作家協会会員。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

ニュースレター
アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用
Universal Mobile

注目の記事

  1. 2020年9月末、ニナは大学に入学する。彼女が進学先として選んだのはカリフォルニア大学(UC...
  2. 2020年10月2日

    豊かな日々を生きる
    「Live rich life」。ピート・ハミルの言葉である。2020年8月5日、彼は85歳...
  3. ケンタッキー州の西部に位置するマンモス・ケーブ国立公園は、複雑に絡み合った小道と大小さまざま...
  4. あなたの食生活は大丈夫? 「体が資本」という言葉がある通り、日々の食事は体の土台を作るための大...
  5. ステンレス製のお皿にライスが隠れるようにルーを全体にかけ、その上にトンカツ、そして付け合わせにはキャ...
  6. この原稿を書いているのは2020年6月12日。昨日、ニナの義務教育が終了した。オンラインでの...
  7. アラスカ州とカナダの国境地帯に広がるのは、世界最大規模の自然保護区。北米大陸最高峰の山々に世...
  8. コロナ禍の3カ月の自粛生活は、私たちそれぞれに、自分の忙しい生活を今一度振り返る良い機会とな...
ページ上部へ戻る