「だし」でぶれない味を完成
北米の日本食市場に挑む

TOP INTERVIEW Vol.1
アメリカ市場に勝負を賭ける日系企業のトップに聞く。
株式会社 にんべん 代表取締役社長
髙津克幸 / Katsuyuki Takatsu

Ninben president

子供の頃から雑煮に使う
鰹節を削っていた

 我が家では江戸時代からの食事として、お正月のお雑煮が今に続いています。鰹節を使ったおだしを使うのが習わしで、それをカンナで削るのが子供の役割で、小学校くらいから大学生の頃まで私が担っていました。当時の我が家は祖母に両親、私以外に姉が2人の6人家族で削る量が多かったので結構大変な作業でした。削っている間に鰹節の良い香りが漂ってくると、ついついつまみ食いをしてしまったものでした。また、お正月に限らず、お味噌汁は常に鰹節を使っておだしを取っていました。だしが生活に密着していました。

 日本の鰹節市場に関しては、微減が続いています。成長している市場ではありません。総務省調べによる家計調査などでも年間、鰹節を家庭で使う量が減り続けています。そこで本来、当社は鰹節屋ではありますが、現在では顆粒だしや、堅調に伸びているつゆにも力を入れています。もともとは調理に使われていた醤油が、つゆに変わっているという背景も後押ししています。また、だしに関しては、最近ではこだわりの無添加素材で作ったものをティーバッグ形式で提供するだしパックが伸びています。

気軽にだしが味わえる
スタンド式「だし場」開設

 弊社はメーカーであると同時に店舗も展開しておりますので、お客様にダイレクトに鰹節、だし、つゆを提供できるのが強みだと思っています。

 中でも日本橋本店の中に「日本橋だし場(Nihonbashi Dashi Bar)」というコーナーが新しい試みとして注目を集めています。2010年に本店をリニュアルした際に開設したもので、スタンド形式でおだし1杯を100円でお楽しみいただけます。この気軽にだしを召し上がっていただける場所を通じて、日本橋近隣のOLの方が買い物ついでに立ち寄っていただくなど、昔に比べると若い層のお客様が増えた手応えを感じています。

輸出は毎年売り上げ増
米国法人設立も視野に

 弊社製品の海外市場への進出は、現時点では輸出ベースでの販売となります。中でも北米が最大市場です。輸出の売り上げは毎年伸びており、昨年は2億円、今年はおそらく2億5000万円になる見込みです。最近、輸出が伸びている理由としては、以前は食品商社の要望に応えるだけだったのが、近年は当社としてもロサンゼルスやニューヨークに出かけて行き、ディストリビューターに同行した営業活動を行っていることが挙げられます。しかし、出張ベースの営業ですと限界があります。そこで、ここ1、2年のうちに現地に法人を作る計画が持ち上がっています。

 私自身、アメリカに何度か出張しました。現地の日本食レストランで食事をして驚いたのが、マグロ、アボカド、クリームチーズのロールを食べた時ですね。クリームチーズの味が強すぎて他の素材の味が感じられませんでした。一方、スパイシーツナロールは美味しくいただきました。そして、うちのつゆを使えば、マイルドながらもピリリとした味をさらに際立たせることが可能です。我々の商品を使っていただくことで、味がぶれずに日本食を完成させることができるのです。そういう意味では世界に大きなチャンスがあると考えています。

PROFILE
1699年ににんべんを創業した初代・髙津伊兵衛から数えて13代当主。デパートの高島屋を経て、にんべん入社後は静岡県の工場で鰹節の選別、本社での生産計画、営業、総務部門を歴任し、創業310周年の2009年に株式会社にんべん代表取締役に就任。

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