カイロプラクター
ロバート・T・ジョー

文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)

 高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

「身体、環境、精神 総合的に自然治癒力を改善」

 カイロプラクターというと背骨のずれを治すというイメージがあるかもしれません。しかし、今はそれだけでなく、身体の構造、食事や環境などのケミカルな条件、さらに精神状態から成るトライアングルを整えることで、人間が本来備えている自然治癒力を高めるところまでもっていく仕事です。私がカイロプラクターについて知ったのは大学2年の時でした。子どもの頃から鍼灸に携わっていた父の仕事の現場に立ち会っていたこともあり、将来は人の健康に関わる仕事を希望していました。また、親戚一同、自営業だったので、サラリーマンになるのではなく、手に職を付けて独立開業するという考えが刷り込まれていました。

 日本からアメリカに移ったのは高校時代。その後UCLAに入学しました。歯学部に進もうかとも考えましたが、歯だけよりも、トータルに健康に携わることができるカイロプラクターを選び、UCLA卒業後にロサンゼルス市内のクリーブランド・カイロプラクティック大学に進学しました。

 3年半にわたり、朝の7時から午後3時まで、病理学や解剖学といった講義を受けました。薬と手術についての勉強がない点を除くと、医学部と同じような内容を学び、取得するのもドクターのディグリーです。試験は国家試験と州のライセンス試験とがあります。私は将来の転居を考えて、カリフォルニア州以外にハワイ州の試験も受験し、国家試験と共にすべて初回で合格しました。今から25年前のことですから、既に状況は変わっているでしょうが、カリフォルニア州の試験の合格率は当時で3割程度でした。

 その後、4年半、ロサンゼルス地域の日本人のカイロプラクターのオフィスで勤務した後に、独立して現在のクリニックを開業しました。最初の壁は、遡って、インターンとして働いていた時に、「勉強したことと、患者さんの症状とはまた別だ」と感じたことでした。教科書と違うだけでなく、患者さん一人ひとり、症状は異なります。その時に、多くの知識を常に意識的に取り入れることの重要性を実感して、以来、セミナーに出席したり、他のドクターと情報を交換したりするなどの努力を続けてきました。人間の体は、食べるものや周囲の環境に影響を受けることで変化します。状況によって治療へのレスポンスも変わってきますから、さまざまなことを学びながら、治療を続けていくことで経験値を重ねてきました。

 病院に行っても原因がわからない、身体全体が痛いという患者さんでも、カイロプラクティックの診断で自律神経が機能していないことがわかり、治療して自然治癒力を上げることに成功した例もあります。また、皮膚がかぶれてしまい、皮膚科でステロイド治療を受けても直らなかった患者さんを診断した際に、神経の流れが滞り、その結果ウィルスが肌の下に溜まっていることがわかり、症状が改善した例もあります。一つひとつ異なる症状に取り組むのは体力も、精神的にも集中力が必要ですが、患者さんが少しずつ良くなっていくのを見ること自体が、私自身の何よりのやりがいになっています。

症状の軽減に誠心誠意尽くす

 この仕事に向いているのは、患者さんの症状を軽くしてあげたい、治してあげたいと心から思って、そのために誠心誠意尽くす人です。ちなみに、うちの患者さんには、学生時代に受けたカイロプラクティックの治療に手応えを感じて、実際にカイロのドクターになった人もいます。

 私のポリシーとして、患者さんにはここで治療を受けるだけでなく、家でできるストレッチなども覚えてもらうようにしています。日々の努力で症状は確実に改善するのです。久しぶりに外で患者さんに会った時に「先生に教えてもらったストレッチのおかげで、すごく楽になりました」と言われると心から嬉しく感じます。

 遺伝子組み換え食品などの増加で人々の健康にも影響が深刻化することで、今後、この仕事はますます必要になっていくと確信しています。10年後には、健康状態をトータルに診断し治療するクリニックを自然豊かな場所に開設したいと思っています。畑や海が近くにあって、気持ち良くリハビリに打ち込めるような環境だといいですね。目標の10年はすぐに経ってしまいそうです。独立してからの21年もあっという間でしたから。
Robert

My Resume
●氏名:ジョー・T・ロバート(Robert T. Jo)
●現職:East West Chiropractic & Acutherapy Clinicオーナー/カイロプラクター
●取得した資格:California Chiropractic License, Hawaii Chiropractic License, Certified Chiropractic Sports Physician, Certified Applied Kinesiologist, Certified Spine Research Institute of San Diego Kinesio-Release Therapyというコースを受講者に提供する創設者でもある。
●ビジネス拠点:南カリフォルニア
●その他:ウェブサイトはなし。クリニックの患者はほぼ口コミによる集客。クリニックの電話番号310-328-3363

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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