第52回 ママ友は財産だ

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

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 先日、近くの大規模ショッピングモールに台湾料理の人気レストランが開店した。子どもたちが同じ小学校、中学、高校に通ってきたY子さんが、他のママ友と一緒に行くタイミングで私も誘ってくれた。行列必至の店だけに彼女たちは開店11時ではなく、9時半から並ぶのだそうだ。「その間におしゃべりして待っている。恵子さんは忙しいから11時に来てくれればいいよ」。Y子さんはいつもよくしてくれる。彼女はアメリカ人のご主人と日本で出会って結婚、3人の子どもに恵まれた。ご主人は日本で英会話学校を経営し、軌道に乗っていたそうだ。しかし、ご主人が「子どもたちにはアメリカの教育を受けさせたい」と突如帰国を決行。そして、小学校の低学年で渡米した子どもたちはすくすくと成長し、長女は2016年秋にUCに入学した。

 彼女は教育熱心だ。学校のことでわからないことを聞くと、ほとんどのことを教えてくれる。教師の評判についても詳しい。Y子さんは子どもたちのクラブ活動にも熱心に関わってきたので、同じ立場の保護者と情報を活発に交換しているのだと思う。私はその情報を間接的にいただくという恩恵にあずかっているというわけだ。

 高校は分かれてしまったが、隣のブロックに住むニナの親友の母親のAにも随分助けられた。彼女はフィリピン系アメリカ人。自宅でHRの仕事をしながら、常に学校のPTSAでも役員を務めていた。キャンパスの環境問題に取り組むグリーンチームを結成した時もニナに声をかけてくれ、自分の母校のUCLAの教授を訪ねる時も自分の娘だけでなくニナも連れて行ってくれた。Y子さんもAも、あまりに何もしないズボラな母親である私を見かねて、手を差し伸べてくれているのではないかと思えるほどだ。何もお返しができていない。

仕事と育児の両立

 Y子2さんは私にとって戦友的なママ友だ。彼女とは19年前、互いに長男を預けていたベビーシッター先で出会った。当時、フルタイムで働いていた私たちは、6時過ぎに子どもを迎えに行く頃には共に疲労困憊状態だった。

 長男同士、5歳下の長女同士は仲良しとして育ち、誕生会には必ず顔を合わせた。子どもの学校も仕事場も違うので、ママ友としてはそれほど密な情報交換をしていなかったが、数年前にY子2さんが担当していた市場調査の仕事に私は声をかけられた。そのプロジェクトのために、一緒に各地へ出張するようになった。出張先での彼女に私は圧倒された。仕事はもちろん全力で取り組むが、夜になると自宅に残した子どもたちとスカイプでコミュニケーションを図り、さらに日本にいる母親とも話していた。なんというマメな母親かつ娘。他方、私はノアが無断欠席したという連絡を学校から受けた時しか、家族に電話はしなかった(その無断欠席は結局、学校側の誤認だったのだが)。仕事を理由に母親業になかなか時間を割けない、というのは言い訳なんだということを、私はY子2さんを見て猛省した。

 さて、先日、久しぶりに、2人の娘の母親であるYさん(私の友人のイニシャルはYばかり)と会った。彼女はご主人のビジネスをサポートしながら、自分でも会社を経営する多忙なワーキングマザーだ。取材を通じて初めて会ったのは10年以上前。その頃に「母親業と仕事をどうやって両立しているのか?」と当時まだ子どもがいなかったYさんは私に質問したのだそうだ。「恵子さんは『他の母親に、自分には時間がないというイメージを植え付けておくこと。そうしたら、あの人はどうせ忙しいからと放っておいてくれる』と言った。私は今でもそれを守っている」とYさん。私は、偉そうな言葉を放った過去の自分に呆れた。しかし、そういう不遜な態度、かつズボラな私のことを、見捨てず助けてくれるママ友にはいつも感謝している。ちなみに冒頭のレストラン、11時に来ても仲間に入れてくれると言ってくれたのに私は用事ができてドタキャンしてしまったのだった。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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