3人の起業家たち
それぞれのサクセスストーリー
- 2017年7月1日
- 2017年7月号掲載
シアトルで日本的学習の場創設
国際的リーダーを育成したい
四つ葉学院
代表 西尾由香さん
文部科学省小学校教諭免許、幼稚園教諭免許、学校図書館司書資格、日米モンテソーリ教員免許を保持。神奈川県の小学校勤務を経て、夫の転勤に伴いシアトルへ。サイエンスラボ倶楽部、土曜補習授業教室、大手進学塾海外加盟校の提携プログラムの学習塾から構成される四つ葉学院を経営。
不安より好奇心
主人の仕事の関係で、渡米する直前まで、長い間、日本の公立小学校の教員をしていました。日米の教育システムやカリキュラム、また教員の研修制度に、もともと興味を持っていたので、不安よりも好奇心の方が強かったと思います。
息子が通っていた小学校のボランティア活動や、学校行事、カンファレンスなどに参加する中で、現地の学校のカリキュラムや、教科の学習内容について知ることができ、日本の学習要領の素晴らしさを再認識することができました。
例えば、理科教育一つとってみても、日本では、物理・化学・地学・生物の四分野の基礎学習を小学校の段階で系統立てて学びます。
そこで、日本の小学校の理科授業をシアトルに再現する形で、2012年10月に「サイエンスラボ倶楽部」を開設し、土曜日の補習授業校をその半年後の2013年4月に開校しました。日本と同じように4月始まりです。
アメリカで学校を設立する大変さ、というのはなかったですね。日米で20年以上教えていましたので、シアトルで日本的な学習の場を実現できたことが、大変嬉しかったです。そして、ユニークな授業を次々に企画し、多くの方たちに協力をいただきながら実行に移しました。ワシントン大学に研究留学されている科学者の方達にも、最先端の研究を子どもたちにわかりやすく、説明していただくセミナーも、授業に関連付けて開催しました。
現場の専門家を授業に招く
例えば「においを科学する」「人の体を科学する」「脳を科学する」というようにテーマを決めて、その分野の専門家を授業に招いたのです。机上の学習ではなく、子どもたちが興味を持つように、それらの科学は実際にどのように応用されるのかというところまで含めて、各企業や大学の現場で取り組まれている方にお話をしていただきました。特にシアトルはITのメッカなので、ITの専門家の方にも講師として授業に参加していただきました。
私自身も楽しみながら企画をして、講師の方と一緒に話し合いを重ねながら授業構成を考えます。 今後は科学やITだけでなく、歴史教育にも焦点を当てていきたいと考えています。「僕たち、昔の事は知らないよ」とひとごとではなく、現地の友達や、関わる人に、史実に基づいた歴史の内容を、子供達自身の言葉で説明したり、誤解を解いたりしながら、一人ひとりが小さな外交官として、貢献できるような教育が必要だと思います。また、戦前戦中戦後の状況を知ることで、今の子どもたちは自分がいかに恵まれた環境にいるかに気づくことも大切です。地元の日系財団や団体と協力して、今後は、子どもたちの「歴史教育」も展開していきたいと考えています。
子どもの限界を決めない
ここに来るまで挫折や障壁はなかったか? 障壁というのは課題のことかな、と捉えています。
子どもたちには学力を身につけるだけでなく、弱い人、困っている人を助けられるような国際的なリーダーになってほしいと願っています。そして「幸せに生きるための力」を身につけてほしいですね。また、常に思うことですが、子どもの可能性に親が限界を決めてしまうのは本当に勿体無いことです。子どもが主体的に伸びていけるように、親も学校もサポートしていくことこそが重要です。
学院も5年目に入り、先日、海外子女教育振興財団の機関紙「海外子女教育」に本校の子供達の活動と取り組みが特集記事として掲載されました。ここまで、子どもたちが頑張ってきたことが評価されたことを嬉しく思うと同時に一つの節目でもあると感じています。 目の前にいる子どもたちに何ができるかをつねに模索しながら、多様な学びの場を提供できるよう今後も挑戦を続けていきたいと思います。
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