アメリカの刑事裁判には、司法取引という制度があります。よく映画などで見られる「罪を認めるなら罰を軽くしてやる」というような、検察官と被告人の合意がそのひとつです。多くの刑事裁判は、裁判に至る前に司法取引により解決しています。
しかし、もしあなたが移民やグリーンカード保持者である場合、簡単に司法取引に合意せずに、まずは移民としてどういったリスクがあるのかよく考えましょう。アメリカ市民が逮捕された場合、弁護士はその後の裁判や服役を回避するための戦略をすすめるでしょう。そのなかには、有罪の申し立てや不抗争の申し立ても含まれます。不抗争の申し立てとは、被告人が公訴事実を認めるのでも否定するのでもなく、罪状認否などにおいて検察側の主張に対して争わない、という意味です。しかし、それにより刑務所は回避できたとしても、移民裁判所において国外追放となってしまうのでは意味がありません。むしろ国外追放され二度とアメリカへ戻れないリスクもあり、一層悪い状況に陥ることもあります。
逮捕された後に告発が却下された場合は 「有罪判決」とはみなされません。しかし将来、移民申請をするにあたりGood Moral Character(道徳的な人格者)であることを実証する際に、問題となるかもしれません。有罪とならなくても逮捕歴があることには変わりないからです。また、少年裁判は審査の対象とはなりませんが、18歳未満であるにもかかわらず大人として告発された場合は、その犯罪を理由に国外追放となることはあります。
さらに移民国籍法によれば、正式に有罪判決を受けたか否かにかかわらず有罪とされることがあります。例としては、公式に罪状認定はなかったが、あなたが有罪や不抗争の申し立てをした場合です。また、あなたが有罪とされるに十分な事実関係を認め、裁判官が何かしらの罰則、罰金、自由の拘束などを命令した場合も有罪判決を受けたとみなされ、それを根拠に国外追放となることがあります。たとえ麻薬やアルコールのリハビリ、カウンセリングなどの裁判所命令の要件を完了したのちに、有罪申し立てが取り下げられたとしてもです。
また州によっては一定期間の後、あなたの過去の犯罪を「抹消」する、もしくは犯罪記録から削除することが可能です。それにより、就職や大学への進学などの道が開けることにはなりますが、移民に関していえば、刑事告発を抹消しても国外追放手続きを避けることはできません。このように、移民であることにより、犯罪歴があなたの人生を大きく左右しますので、逮捕されてしまった際には刑事弁護士だけでなく、必ず移民法専門の弁護士にも相談しましょう。
※本コラムは顧客からの質問を一般的なケースに書き換えたものであり、読者への情報提供を目的としたものです。特定事例における法的アドバイスが必要な場合は、専門家に相談してください。
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