「Tokenセオリー」とは
〜女性社員の占める割合と、その影響について〜

アメリカで働く女性の皆様、職場での社員の男女比はどのようになっていますか?

私の勤務先は、業種が半導体ビジネスという分野のためか、会社全体で見ると男性社員の比率が圧倒的に高くなっています。しかもその中でさらに「日本人女性社員の占める割合は?」と考えると、それはもうほんの微々たるものです。皆様は、ご自身の勤務環境について考えてみたことはありますか?

実は私も、今まであまり社内での男女比や日本人女性社員の比率など気にしたことはなかったのですが、先日読んだギンカ・トーゲル氏著の『女性が管理職になったら読む本』の中で、非常に興味深い「Tokenセオリー」を学んだので、ご紹介したいと思います。

ここでの「Token」は、ある組織内での少数派グループ(厳密には組織での割合が15%以下)に属する人々のことを指します。またこの場合の「Token」には、「象徴」あるいは「目につきやすいもの」「目立つもの」という意味があります。この少数派に位置するものには国籍、人種、性別などいろいろなグループ形態がありますが、本書では「女性社員」を一例としてあげています。

Tokenセオリーによりますと:
1) ある社内で、女性社員の割合がこのTokenだった場合、この女性社員が何かを発言すると、社内では「これが全女性の考え方だ」と一般化してとらえられてしまう。
2) Tokenとなった女性側も「自分は少数派だ」と自覚している場合、そのプレッシャーを感じてしまい、必要以上に慎重に行動する。
といった傾向が顕著に見受けられるとのことです。

私はこのTokenセオリーを読んでいて、なるほどと思わざるを得ませんでした。確かに自分自身の行動パターンを省みても、たとえばある会議で女性出席者が私1名だった場合、「なるべく目立たないよう、発言をしないでおこう」と行動してしまっていた気がします。でもそのようにふるまってしまうと、トーゲル氏曰く「同会議に出席していた男性社員から『あの女性社員は、会議に出席しているのにまったく発言しない』などと言われてしまったりすることもあるため、注意が必要」とのこと。改めて自分の行動パターンについて考えされられました。

また、トーゲル氏は「一人一人はまったく違うのに、Tokenな状況下では「皆こういうものだ」と一括りにまとめられてしまい非常に危険。そのため、自分がTokenな状況にある場合は、外部からどう見られているかをしっかり認識して行動すべき。また、会社全体として正しい判断をするためには、Token化に陥らないような環境を整備するよう配慮すべき」と説明しています。

私はこの「Tokenセオリー」を読んでいて、今まで長く心の中にあったつかえがスッと取れた気がしました。17年前に日本企業の現地法人である現会社に入社した時、現地採用の日本人女性社員は私たった一人。良くも悪くも、自分の発言があたかも「日本人女性社員の代表」のように取られてしまう、無言のプレッシャーはこれだったのか! 長年の謎がやっと解けた気がしました。

今では日本人の女性現地社員はあまり特別視されなくなったのですが、それでもTokenな状況には変わりありません。そんな中でも、自身の積んだ経験を生かして自分らしく活躍できるよう努めつつ、今後入社する将来のToken日本人女性社員をサポートしていこう……と、改めて思いました。

最近ではダイバーシティ推進の一環として、女性管理職の人数を増強しようとしている会社も増えていると聞きます。働く女性として、大変喜ばしいことです。ただ、女性役員を一人だけ採用して「弊社はダイバーシティ推進に努めています」と言うのはどうでしょう。結局その女性役員がToken化してしまい、悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるかもしれません。実情を正しく認識するためにも、このTokenセオリーをしっかり理解した上で方針策定・環境整備に努めていこう、という会社が増えていくといいですね。

これを機に、貴女の現在の職場環境を改めて振り返ってみては如何でしょうか? たとえTokenな状況であっても、状況をしっかり見据えながら自分らしく頑張っていきましょう!

参考文献:
ギンカ・トーゲル著『女性が管理職になったら読む本 ―「キャリア」と「自分らしさ」を両立させる方法』(日本経済新聞出版社)

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北村祐子 (Yuko Kitamura)

北村祐子 (Yuko Kitamura)

ライタープロフィール

在米23年。津田塾大学を卒業後に渡米し、ルイジアナ大学でMBAを取得後、テキサス州ダラスにある現在の会社で勤務すること20年目。ディレクターとして半導体関係の部品サプライチェーン業務に関わるかたわら、アメリカで働く日本人女性を応援しようと日々模索中。モットーは、「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」。

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