テレワーカーはハッピー?

いまだに終わりが見えないこのコロナ。ワクチンの広まりとともに感染者数が減少して喜んだのも束の間、今度はデルタ株やらラムダ株やらが頭角を現してきました。私の住むテキサス州では、「マスクの着用を強制してはいけない」というお達しを出した州知事本人がコロナにかかってしまうという事態も起きて、てんやわんや。お仕事面でも当分テレワークが続きそうです。

さて、このテレワーク。昨年春頃に始まってから、あっという間に1年半が過ぎました。もう一生テレワークでいいという人もいれば、早くオフィスに戻りたいという声も聞きます。この1年半を通じて、テレワーク下で働く人たちの心理状態には、どのような変化があったのでしょう。今年2月にパーソル総合研究所が日本全国3000人の就業者を対象に調査したデータが非常に興味深かったので、一緒に見てみましょう。

まず、テレワーク環境下で働く人たちの幸せ実感度はどうでしょう。以下のチャートを見ると、8項目のすべてにおいて、テレワーカーのほうが出社者に比べて幸せ度がアップしています。どうやらテレワーカーは、事務所に出社する人たちよりも全体的にハッピーな傾向にあるようです。

コロナ以前はテレワーク反対派の声も多く聞かれましたが、テレワークによって一人一人の働く幸せ実感度がアップするのであれば、あながちそんなに悪いものでもないのかもしれません。実は何を隠そう、私もコロナ以前はテレワーク反対派でした。チームメンバー同士の連携が薄くなってしまうのではないか、サボってしまう社員がいるのではないか……それが私の主な懸念点でした。でもこうして1年半テレワークを進めてみると、日々の業務は滞りなく進んでいますし、さまざまなオンラインツールを駆使したチーム活動も進んでいます。仕事も進むし社員はハッピーとなれば、テレワークという働き方を取り入れるメリットは大いにありそうです。

では次に、テレワーク下での幸せ実感度を年代別に見てみましょう。これはちょっと驚きの結果が出ました。30~60代においては、テレワーカーが出社者よりも幸せ実感度が高かったのですが、20代の群だけその逆の結果が出たのです。私は勝手に「20代の若者なら、ネットやオンラインツールなどを駆使してテレワークに抵抗なく馴染めるのでは」と思っていたので、これはちょっと驚きでした。さらにデータを紐解いていくと、どうやら20代のテレワーカーたちは仕事の悩み相談をしたり、業務スキルのトレーニングを受けたりする機会を欲しているようです。テレワーク下では、上司や同僚とのつながり時間が取りづらいといったこともあるのかもしれません。

20代に関するこの結果、最初はちょっと驚きましたが、よく考えてみると、それもアリなのかもと思えてきました。先月、私が共同運営しているNPO法人DJCW(Dallas Japanese Career Women)にて、東京の津田塾大学に通う学生13名を迎えてオンラインによるインターンプログラムを1カ月間実施したのですが、その時の学生さんとの会話で、「コロナで授業が全部オンラインになってしまい、新しい友人が作れなくてつらい」とか「サークル活動もすべてオンラインであるため、イマイチ楽しめない」といった声を聞きました。イマドキの日本の大学生は、私が一度も聞いたことのないような多種多様のオンラインツールを駆使して学生活動をしているようですが、それでもやはり対面に勝るものはないようです。

とはいうものの、オンラインというツールがなければそもそもダラスにあるNPO法人と、東京にある津田塾大学がインターンプログラムを一緒に実施することなどできなかったわけですから、オンラインの力はやはり偉大だと思います。今後コロナがどれだけ続くか分かりませんが、オンラインや対面というアプローチをうまく活用し、皆がハッピーに過ごせる活動を進めていきたいですね。

参考:
パーソル総合研究所・はたらく人の幸せに関する調査[続報版]結果報告書 2021.05
はたらく人の幸せに関する調査【続報版】 結果報告書 (persol-group.co.jp)

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北村祐子 (Yuko Kitamura)

北村祐子 (Yuko Kitamura)

ライタープロフィール

在米23年。津田塾大学を卒業後に渡米し、ルイジアナ大学でMBAを取得後、テキサス州ダラスにある現在の会社で勤務すること20年目。ディレクターとして半導体関係の部品サプライチェーン業務に関わるかたわら、アメリカで働く日本人女性を応援しようと日々模索中。モットーは、「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」。

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