日本で住む家を探す(1)

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

老後日本へ帰国する際には、日本で住む家を確保しなければなりません。すでに住居を保有していれば帰国後そのまま住むことができますが、そうでなければ新たに探す必要があります。今回から3回に分けて、そうした住居探しに参考となる情報を紹介します。

帰国後の住居の入手方法については、一般的に下記に分類されます。

1. すでにある

以前日本で家を購入した、親の家を相続したなどの理由ですでに家がある、または実家や親族の家での同居が可能なケースです。帰国後すぐに住めますので、新たに探す必要はありません。

2. 借りる

住居を購入する資金がなくても利用できるのが、賃貸住宅です。入居時の資格要件を満たし、入居一時金(敷金、礼金、仲介料など)を支払えば、月額家賃で住むことができます。海外からの帰国者についても資格要件を満たしていれば入居可能ですが、最近、高齢者(60才以上)の契約が難しくなってきています。これは、近年の高齢化社会において発生している孤立死の問題が深く影響しています。

特に民間の不動産会社で扱っている物件においては、オーナー(家主)が孤立死事故を敬遠する傾向があり、高齢者との契約に消極的です。たとえ所得が十分あっても、この状況は変わりません。また保証人がいる場合、契約を認めてくれるオーナーもいますが、決して多くはありません。

一方、国や地方自治体が運営する賃貸住宅については年齢制限がなく、高齢者でも入居可能です。詳しくはまた別の機会に紹介します。

3. 購入する

購入に際しては、物件探しから契約までの一連の手続きに時間がかかります。日本へ帰国する前の米国居住時から動き出す必要があります。少なくとも1回は事前に来日して、候補物件の見学、不動産業者との打ち合わせを行うようにしましょう。海外居住者は、不動産売買契約締結や新築物件の抽選応募手続き時の書類が日本国内居住者と異なる場合があるので、その辺も不動産業者と十分に確認する必要があります。

購入時の支払い方法については、まとまった資金があって一括購入できればよいのですが、銀行などの融資を利用する場合は長期の返済計画が求められますので、就労などによる定期的な収入がないと利用できません。数年内にリタイヤする予定がある、またはすでにリタイヤしている中高齢者が融資を利用するのは難しい状況です。

また購入時には、物件価格のほかに諸経費がかかります。日本では登録免許税、不動産取得税、固定資産税、売買契約のための印紙税などがかかりますが、目安として物件価格の3~5%程度とお考えください。このほかにも、契約書作成について司法書士に依頼すればその報酬、住宅ローンを利用する場合は金融機関への融資手数料、保証料、さらには購入後の維持費として火災保険料、マンションであれば修繕積立基金、管理費などがかかります。

4. 一時的に借りる

目的としては、新たに取得する(または取得した)持家や賃貸住宅への入居までの間の、一時的な仮住まいになります。親族や知人宅が一時的にでも利用できればよいのですが、頼める親族、知人がいない場合は、短期間であれば比較的安価なビジネスホテル、数週間~数カ月の期間であればマンスリー(またはウィークリー)マンションが利用可能です。

マンスリーマンションは各地に物件があり、生活に必要な最低限の家具も揃っていて、すぐに利用できる手軽さはありますが、入居にあたっては親族または知人による保証人が必要となる場合があります。

5. 高齢者施設

各種の施設がありますが、大別すると、日本の公的介護保険制度において運営されるものと、認可を受けた民間会社が運営する高齢者専用住宅があります。

前者の代表的なものとして「特別養護老人ホーム(特養)」があります。介護保険制度において運営される公的施設なので、加齢や疾病により介護が必要な状況でないと入居できません。また公的施設ということで、入居費が安い分入居希望者が多く、すぐには入居できず順番待ちとなるケースもあるようです。

後者の代表的なものとして、「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者住宅」があります。国から認可を受けた民間企業が運営する施設で、介護サービスの内容も必要最低限のものから充実したものまで幅広く提供されており、自分に合ったサービスを受けられる施設を選んで入居できます。前者の公的施設に比べると、入居費は高くなります。

次回は、帰国者が知っておいた方がよい情報について紹介します。

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
ひっきりなしに持ち込まれるお客様からの国際手続きに関する多種多様なご依頼、ご相談(お悩み)を断り切れず休日返上で対応しているうちに、気がつけば(年金、日本帰国といった当初の事業以外の)あらゆる分野のノウハウを備えたオールラウンドコンサルタントに。当社で対応できないケースでも、的確な解決方法や提携先の他分野専門家を紹介します。

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