Vol.7 生きとし生けるものの楽園
イエローストーン国立公園
− ワイオミング・アイダホ・モンタナ州 −
文&写真/齋藤春菜(Text & Photo by Haruna Saito)
- 2018年8月6日
- ワイオミング州
世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2018年7月現在、167カ国で1092件(文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件)が登録されている。
あちこちで湧き出る温泉に表情豊かな山野、豊富な水……。植物も動物も鳥類も、そして昆虫類にとっても、あらゆる生き物の楽園であるイエローストーン国立公園は、1872年に世界で初めて制定された国立公園だ。アメリカ最大級の火山地帯に位置するこの公園は、無数の間欠泉や温泉などの熱水現象、渓谷や滝といった起伏に富んだ荘厳な景観美、アメリカ開拓期以前の動植物層を残す手つかずの自然など、類まれな魅力を有している。原始の地球の姿、そして地形や生態系の進化の過程を示す顕著な見本として、1978年には遺産第1号の一つとして、世界自然遺産にも登録された。
3州にまたがる公園の広さはおよそ222万エーカーで、アメリカ国内では最大規模。その敷地の大半はワイオミング州に位置している。公園の80%は森林、15%は草原、5%は水に覆われており、大小約290もの滝があるのも特徴だ。
公園最大の見どころは、熱水現象。ここには500以上の間欠泉があり、その数はなんと世界の半数以上を占めているのだそう。必見なのが、オールドフェイスフル間欠泉で見られる熱水の噴出だ。1分半〜5分間続く噴出は、天を裂くような勢いで106〜184フィートもの高さまで熱水が吹き上がる。1〜2時間おきに見られるその光景は圧巻。
また、園内最大の熱水泉グランド・プリズマティック・スプリングも見逃せない。直径370フィート、深さ121フィート以上ある熱水泉は、濃い碧を中心にエメラルド、黄、オレンジと、外側に向かって鮮やかな美しいレインボーカラーが広がる。このほかにも、白い石灰段丘のようになった温泉が見られるマンモス・ホットスプリングスや、コポコポと泥が吹き上がるマッド・ボルケーノなど、見どころは数知れず。園内の熱水泉はそれぞれ特徴が異なるので、どこへ行っても新鮮な気持ちで楽しめるだろう。
イエローストーンのもう一つの魅力は野生動物だ。ここには67種の哺乳類と285種の鳥類をはじめ、多数の魚類や両生類、爬虫類が生息している。そこかしこで草を食むバイソンはもちろん、エルクやムース、ブラックベア、コヨーテなど、さまざまな動物が暮らすこの公園は、まさに生き物の王国。
野生動物を見るならレイマー・バレーがおすすめ。ありのままの生活を送る彼らの姿には、日常を忘れてしまうだろう。イエローストーンでは野生動物たちとの距離が厳密に定められており、必要以上に近づくことは許されない。彼らの姿をしっかりと観察したいなら、望遠鏡を持参しよう。人だかりができている所には近くに生物がいる証拠なので、注意深く周囲を観察してみて。
イエローストーンではハイキングやキャンプのほか、サイクリングやボート、釣り、乗馬、冬にはスキーやスノーモービルなども楽しめる。園内を知り尽くしたレンジャーが案内してくれるプログラムもあるので、参加してみてはいかが。
イエローストーン国立公園
Yellowstone National Park
登録年 1978年
遺産種別 世界自然遺産
https://www.nps.gov/yell/index.htm
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