第73回 日本語のSAT

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

SATの会場となったロサンゼルス市内の高校。受験する大学が試験会場となる日本とは、根本的にシステムが異なる

SATといえば、ACTと並び大学合否の判断材料となる統一試験。今年の9月にジュニアになったニナも、いよいよ本格的なSATの受験シーズンを迎える。しかし、これまで通りすべて本人任せでもあり、「春くらいに受験すればいいんだろう」と思っていたところ、ニナが突然「日本語のSATを受けた方がいいかな」と相談してきた。彼女の高校に日本語のクラスはない。しかし、外国語のSATで日本語が選択できる。相談を受けたのは10月の上旬。申し込み締め切りは翌日だと言う。

何でも、日本語SATを受ける友達に「ニナは受けないの?」と聞かれたらしい。それを聞いた私、我に返って「それは受けるでしょう」と即答。ニナは「一晩考えてみる」と答えた。

さて、翌日。ニナの結論は「やっぱり受けるよ。M(日本語SATのことを教えてくれた友達)と同じ会場で受ける」というもの。良かった。早速、ネットで会場の空きをチェック。しかし残念なことに、家から近いMと同じ会場はすでに満席。続いて探してきた場所はかなり治安が悪い地域にある高校だったので却下。次にニナが空きを見つけたのは、ビバリーヒルズの南側にあるロサンゼルス市内の高校。よく横を通るし、知り合いも近所に住んでいるので環境はイメージできる。すぐに受験用の写真を撮影してアプリケーションを記入し、受験料(52ドル)を払い、オンラインで申し込み完了。

驚いたのは、当日、会場にCDプレイヤーを持参しなければいけないということだった。リスニングのテストに使用するという。「私の大学受験の時も英語のリスニング試験はあったけど、皆で一斉にスピーカーから流れてくる音声を聞いて質問に回答したんだよ。どうして個別にプレイヤーを持っていかないといけないの?」と聞くと、ニナ曰く「だって、それぞれのスピードとかペースがあるでしょ。一斉にはできないよ」とのこと。そういうことか。そこで、ポータブルのCDプレイヤー購入。

早めの行動が鍵?

11月3日の試験前日。最初は友達と同じ会場だったら受けてもいいかな、とまるで当事者意識がなかったニナだが、ここまで来たら一人でも受ける気満々。

そして突然、SATのサイトにあるサンプルテストのページを私の前で開いた。リスニングのテストで「今日も雨ですね」「でも明日は晴れるようですよ」といった短い会話が流れる。問題は「昨日の天気は何だったでしょう」。そのままの答えは会話の中にないのでトリッキーかもしれないが、それでも聞き取りができさえすれば答えを導き出すのは簡単だ。

10問あるサンプルを解いた後、ニナは次に「動物の数え方が出たらどうしよう」と口にした。「『匹』が小さい動物? 『頭』が大きい動物? 鳥は『羽』? でもうさぎも『羽』で数えるんでしょ? ネズミは何なの?」。「日にちの数え方も難しい。『ついたち』から『とおか』。それでもう普通に数えればいいと思ったら、『はつか』がまたやってくる!」と。確かに。日本語は奥が深い。子どもの頃から自然と身についている一世の私にはない「外国語として習得する苦労」が、二世の子どもたちにはあるのだ。

試験当日。フリーウェイの最寄り出口が工事で閉鎖されていたことには焦ったが、試験自体は無事に終了。「会場には12人、生徒がいた。ジュニアは数人でほかは皆ソフォモアだった。それに遠くの高校から来ているのも私一人だった」と本人。何事も早めの行動を心がけるべきということか。ちなみに外国語のSATは、年に1度しか受験のチャンスはないらしい。申し込みも近いエリアの会場が空いている段階の方がいいし、当日の出発も早めに。フリーウェイの出口が閉鎖されているかもしれないのだから。

参考:
https://collegereadiness.collegeboard.org/sat-subject-tests/subjects/languages/japanese-listening

 

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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