第87回 学校でのボランティアの勧め

ニナが進学したカリフォルニア大学からは、「ペアレントナイト」といったタイトルのバーチャルイベントのお知らせが定期的に届く。それはオンライン講義が子どもに与える影響を保護者がカウンセラーに相談する質疑応答だったり、現在はパンデミックで閉鎖されているキャンパスを見学するオンラインツアーだったりと、内容はさまざまだ。しかし、学校への関わり方で高校までと異なるのは、大学では学費を払う代わりに情報もサービスも保護者が受ける側に回っているということ。高校までの義務教育では、公立校だったので授業料が無料だった分、とにかく学校の運営に保護者が積極的に関与し、時間とスキルと労力を提供し続けた。

私は長男ノアとニナの現地校、週末の日本語学校でボランティアをすることに多くの時間を使った。日本語学校では、学校の運営資金を捻出するためにカレーセール、テリヤキセール、スパムむすびセール、クッキーセールと種類を変え、月に一度は子どもたちを迎えに来る保護者に販売する商品作りに精を出した。朝の8時にはキッチンに入り、立ちっぱなしで食材を切ったり煮たり焼いたりして数百個分の容器に詰めて、さらに屋外のテーブルに並べて販売した。

現地校で一番大変だったボランティアは、ニナが4年の時の学級菜園係だった。私は単純に菜園のお世話をするだけでいいのだと思い込んで登録したのだが、クラスの生徒たちに植物について、またコンポストの作り方について月に一度教えるという、まるで理科の教師のような仕事だということを知って驚愕した。しかし、みずから登録したのだから後には引けず、結局、毎回の授業内容を学区のスタッフが主催する予習会で習得し、暗記することでなんとか乗り越えた。大変だったが、得たものも大きかった。子どもたちが授業中にどんな様子か、毎回観察できた。また、菜園で収穫した野菜を子どもたちや先生と一緒にテーブルを囲んで食べた時などには、自分が学校というコミュニティに所属しているという実感が湧いてきて本当に嬉しかった。

最高の思い出作り

思い出深いのは、東日本大震災の直後に当時の小学校のPTA会長の呼びかけで実施した寄付金集めのイベントだ。何かできることをしてお金を集め、日本の被災地に送ろうということで意見が一致、放課後に図書室を会場に「ジャパンナイト」を開催した。そこでは、生徒や保護者の英語の名前を漢字に変換して筆ペンで書いたり、巨大な折り紙のカブトを新聞紙で作ったり、また保護者が経営する寿司レストランが寄付してくれたテリヤキプレートを販売したりした。記憶では、全校に私を含めて4人いた日本人の保護者は全員出動、せっせと漢字変換やカブト作りに勤しんだ。寄付金の集計も私とママ友のY子さんが担当した。日本で銀行に勤めていたというY子さんの手際は素晴らしく、私の頭には「餅は餅屋」という言葉が浮かんだ。そして、その寄付金をすべて日本の赤十字に送金した。今からちょうど10年前のことだ。

子どもたちの学校でのボランティアを通じて、私は貴重な経験を積むことができた。英語で子どもたちに教えることなどできるわけがないと思っていたが、そのハードルも超えられたし、何より教師やほかの保護者との信頼関係を築くことができた。自分自身がアメリカの学校に通ったことがなくても、子どもが通うアメリカの学校のために私たち保護者ができることは決して少なくはないのだ。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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