あなたのお仕事武勇伝、もう古い?

「バリバリのキャリアウーマン」と聞くと、どんな女性像をイメージしますか? 私は、かっこいいタイトスカートのスーツをビシッと着こなして、髪型はさらさらロングかオシャレなショート、ハイヒールをカッカッと履きならしながら颯爽とオフィスを歩く、ハキハキした20~40代くらいの女性がパッと頭に思い浮かびます。仕事に情熱を注ぎ、どんな難しいタスクもやり遂げる……そんなスーパーウーマンをイメージします。

フルタイムで働いている女性であれば、誰しも一度はそんな理想的でかっこいいワーキングウーマンになりたいと思ったことがあるのではないでしょうか。私もそのうちの一人です。でも現実はそんな甘いものではありません。思ったように仕事がうまくいかないことなんて日常茶飯事。

また、独身時代は自分の自由に時間を使って仕事に没頭できたものの、結婚するとなかなかそうもいきません。夫の予定も考えないといけない、家のこともしないといけない、こどもの面倒も見ないといけない……など、さまざまな縛りが発生してきます。

でもだからといってそれを言い訳にして仕事のパフォーマンスを疎かにしたくないし、「これだから女性社員は困るんだよね」といったレッテルを張られたくない。そんな思いもあり、何とか仕事とプライベートを両立しようと頑張っている女性も多いかと思います。

そのような努力は素晴らしいことだと思います。でも、それをあたかも「私、仕事のためにこんなに頑張っているのよ」といった武勇伝のようにしてしまうと、話がちょっとおかしくなってきます。この傾向は、私のようなアラフォー世代やその上の世代の女性たちに多いようです。

私の場合、勤務時間終了後もパソコンを家に持ち帰って仕事を続けていました。誰が見ているわけでもないのにパソコン上のIM (インスタント・メッセージ)をグリーンにしておき、「私は家でも仕事をやっているんだよ」アピールを怠らないようにして、土日や夜の遅い時間でもメールを発信しました。ほら、女性でも男性と同様、もしくはそれ以上にしっかり責任を持って仕事をしているでしょ? そんなメッセージを送っているつもりだったのかもしれません。

私と同年代の友人女性の中には、出産後はベビーシッターを雇い、自分は今までどおりフルタイムでしっかり働く……そんな選択をした人もいました。私たち世代が頑張ることで、これから働く女性に平等のチャンスが与えられる。そして、これからの若い世代の女性たちに働く希望を与えることができる……そう思っていました。

でも、先日ミレニアル世代の女性社員たちと話す機会があった時、この思いを180度覆すようなコメントを聞いたのです。彼女たちの意見は、「もちろん仕事を頑張り、社会に貢献していきたい。でも、プライベートも充実させたい。そのためには、先輩女性たちに私生活を犠牲にしてまで仕事に没頭するスタイルをよしとする流れを作り上げてほしくない。それを武勇伝のように話すのではなく、公私ともに充実できるようなワーキングスタイルへの改革を進めてくれたら嬉しい」というものでした。私は頭をガーンと打たれたような思いになりました。次世代の女性たちのためによかれと思ってやっていたことが、実は望まれていることと真逆だったのです。

それを聞いた時、正直最初は「私たちがどれだけ頑張ってここまできたと思ってるの? これだから今の若い女性は……」と思ってしまいました(典型的なオバサン思考?)。でも確かに、持続的に皆がハッピーに仕事をしていくために、そしてこれからの未来を担っていく若い世代が働きやすいようにするためには、発想の転換が必要だなと思ったのです。今でもときどきパソコンを持ち帰って仕事をしてはいますが、ワークライフバランスって何だろうと考えながら仕事をするようになりました。

「バリバリのキャリアウーマン」という言葉。いつの日か、それがかっこいい!という代名詞ではなくなる時が来るのかもしれませんね。

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北村祐子 (Yuko Kitamura)

北村祐子 (Yuko Kitamura)

ライタープロフィール

在米23年。津田塾大学を卒業後に渡米し、ルイジアナ大学でMBAを取得後、テキサス州ダラスにある現在の会社で勤務すること20年目。ディレクターとして半導体関係の部品サプライチェーン業務に関わるかたわら、アメリカで働く日本人女性を応援しようと日々模索中。モットーは、「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」。

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