短期集中連載
第4回 ポジティブ皮膚科学・応用編
パワーエリートをつくるための「皮膚科学×スポーツ科学」総論
- 2019年10月2日
- 2019年10月号掲載
私は「ポジティブ皮膚科学」という概念を提唱しています。人々の心を明るく、気持ちを前向きにすることを目的とし、皮膚科学を基軸に心理学や芸術など、ほかの学問領域との結びつきによる横断的なコンセプトです。
私は「皮膚科学×スポーツ科学」による発想のもと、ビジネスパーソンを含む、特にパワーエリートの可能性について、日頃より関心を持っています。人はその人自身の持つ、いわゆる内面(中身)が大事であることは言うまでもありませんが、ほかの人から見た場合、その人の第一印象は外見(見た目)から入ることもまた事実と思います。これは清潔感といった身だしなみや見た目のたくましさ、快活さを含みます。
今回はポジティブ皮膚科学の応用編として、私が考える「皮膚科学×スポーツ科学」の可能性について、前編(総論)と後編、計2回のお話をさせていただきます。来年、日本はTOKYO 2020、オリンピックイヤーを迎えます。ここアメリカも日本も、公衆衛生的な予防医学を含めて大変な健康ブームで、これから時代はますますスポーツ熱が高まっていくことが予想されます。本連載を通じて、「皮膚科学」と「スポーツ科学」の接点について、読者の皆様にこれまで以上に関心を持っていただけたら大変嬉しく思います。
さて、今回は総論です。スポーツ科学と医学の接点というと、整形外科領域やリハビリテーション医学、あるいはスポーツ内科学(心臓や肺、内分泌や神経科学など)、さらには精神医学や心理学を想像される方も多いのではないかと思います。
日本ではまだまだ認知度が低いのですが、米国皮膚科学会総会には、「スポーツ皮膚科学」というセッションもあります。プロのアスリートや学校教育、地域のスポーツ活動などにおける競技者のスポーツによる皮膚トラブル(スポーツによる外傷や日光障害、感染症など)、そのためのスキンケアが主な対象であり、細分化、専門化が進んでいるアメリカ社会ならではのことと思います。
私はかつてビジネススクールや公共政策大学院で学んだ経験もあり、さらにもっと柔軟に、そして広く皮膚科学とスポーツ科学の接点を捉えることができるのではないかと考えております。
皮膚科学は、スキンケアビジネスといったビジネスの視点を持ちやすい診療科の一つといえます。一方で、スポーツ科学もまた、スポーツビジネスやスポーツ経営学といった領域(サブスペシャリティ)を持ちます。皮膚科学とスポーツ科学の接点を掛け合わせて考えてみた場合、このようにビジネスの視点でも、これまでにないユニークな発想を生んでいく可能性があると私は考えています。
たとえばスポーツ用品メーカーによるトレーニングウェア開発などは、競技力向上を目的としたスポーツ科学による視点に加え、肌感覚や汗の蒸発、熱放散などの皮膚科学の視点も重要となってきます。そのどちらの視点も、競技力向上、健康増進という意味で大切と思います。皮膚科学はスポーツ用品の技術革新にも大きく貢献できると思いますし、今後、トップアスリートや一般競技者のための新たなスキンケアビジネスも生まれてくる可能性が大いにあると考えます。
ここ米国ではメジャーリーグなど、いわゆる4大プロスポーツ(野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケー)はご存知の通り大変な人気で、マーケットも巨大です。そのような現状を鑑みると、皮膚科学とスポーツ科学の接点における将来性について考えた時、胸の高まりを感じずにはいられません。
次回は後編です。皮膚は内面を映す鏡ともいわれます。「皮膚科学×スポーツ科学」の視点について、次回は医学的見地からお話しさせていただきます。
早稲田大学(スポーツ科学)卒業、横浜市立大学大学院(皮膚科学)修了。米国皮膚科学会、米国スポーツ医学会会員。早稲田大学総合研究機構招聘研究員。米マサチューセッツ総合病院、UCLA、英セントトーマス病院などで国際経験豊富。医学博士、MBA、公共政策の修士号を持つ。
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