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〔マレーシア〕みずほ銀が予算セミナー「投資誘致に力点」
- 2019年10月22日
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マレーシアみずほ銀行は16日、クアラルンプール近郊で2020年度マレーシア政府予算セミナーを開催した。4部構成で、予算案のほか、関連する税制改正案や通貨リンギ相場の見通し、米中貿易摩擦による各国・地域への影響などを解説した。予算案で20年の経済成長率が4.8%と予測され、本年見通しを上回ったことについて、「強気ではあるが、米中対立の恩恵や投資優遇策による海外直接投資(FDI)の拡大を見込んだ」と分析。日系企業の関心が高い米中貿易摩擦がマレーシア経済に与える影響については、「米中の輸出を代替するプラスの効果があるものの、現状、中国に代わっての対米輸出はマイナスの影響が先行している」と指摘した。
20年度予算案の特徴について、マレーシアみずほ銀行の関上伸一氏は、「民族、地域、所得階層間の格差是正を念頭に編成され、デジタル・高付加価値産業への投資誘致と、そのための職業・人材教育に力点が置かれている」と述べた。中でも投資誘致に向けたインセンティブ(恩典)の対象を「電機・電子(E&E)」「フォーチュン500や世界的ユニコーン企業」と具体的に絞り込んだ点に触れ、「必要な産業を明確にし、FDIを(強気ともいえる)成長率目標(4.8%)の仕掛け(バネ)としたいのではないか」との見方を示した。
一方で、石油関連収入への依存度が高い歳入を課題に挙げた。20年度予算案では20.7%を占め、17年度の15.7%を大きく上回る。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングスは「20%以内への改善が望ましい」と指摘しており、財務省は「20〜22年で19.5%を目指す」考え。歳出は、開発支出において大型事業の再開を受け、「エネルギー/公共インフラ」「交通関連」が伸びた。
世界経済の約4割を握る米中
米中貿易摩擦を巡るマレーシア、東南アジア諸国連合(ASEAN)への影響については、みずほ総合研究所のシニアエコノミスト、松浦大将氏が解説した。松浦氏は「中国と米国の国内総生産(GDP)はそれぞれ世界経済の15%、24%を占める」とした上で、これら2カ国の動向が世界経済の方向性を決める点を強調。米中対立の影響などで「世界貿易の9割で拡大ペースが減速している」とした。
中国については、実質GDP成長率(四半期ベース)が19年第4四半期(4〜6月)は前年同期比6.2%と、1992年の統計開始以来、最低を記録したものの、「19年の景気対策による効果が出始めており、年末にかけて最悪期を脱する」(松浦氏)見通し。一方、米国は景気拡大が過去最長を記録しているものの、製造業の業況が悪化しており、松浦氏は「景気の減速基調にある」という。20年11月の米大統領選に向けて、トランプ大統領が通商政策に力を入れるとし、「中国側の譲歩がなければ、対中姿勢の軟化は見込み難い」とみる。
これらを踏まえた上で、「(あくまでも試算の上で)中国の対米輸出減少に伴い、ASEANはサプライチェーンを介した対中輸出が減少するというマイナスの影響が当初はあるものの、中長期的には中国の輸出代替を担い、プラスの効果が見込まれる」と分析した。
マレーシアにおいては、半導体製造を中心に米国からの投資が急増。19年上半期(1〜6月)のFDI(製造業)の国別内訳で米国は47%を占めた。産業別では全体の64%をE&Eが占め、「予算案で導入したE&E分野に特化したインセンティブの効果も相まって、今後の輸出増に期待がかかる」(松浦氏)。
20年後半にかけてリンギ高予想
通貨リンギの対米ドル相場は、FDIの流入加速や米中貿易摩擦の早期終結といった「リンギが強いシナリオが現状、優勢」(マレーシアみずほ銀行の関上氏)とし、20年は後半にかけて「リンギ高に振れる」とみている。20年は1〜3月が1米ドル=3.98〜4.27リンギ、4〜6月が3.95〜4.17リンギ、7〜9月が3.84〜4.09リンギ、10〜12月が3.79〜4.07リンギと予測した。
税制改正案については、KPMGマレーシアが、日系企業に影響があるとみられる点について解説。同社のエグゼクティブディレクター、渡邉和哉氏は個人所得税率の変更点で、「課税所得が200万リンギ(約5188万円)以上の超富裕層だけでなく、非居住者に対する課税率も28%から一律30%に引き上げられる」と留意を促した。
また、特別自主開示プログラムの終了により、税務調査によるペナルティー率が法人税に関しては今月1日から通常の45%(自主開示は35%)に戻った。税務調査の結果に不服がある場合は、当局に異議申し立てできるが、紛争解決までには時間がかかることから「事前に資料を準備し、税務調査に備えておくことが肝要だ」(KPMGマレーシア・シニアマネジャー、石渡久剛氏)と呼び掛けた。
国内3カ所で実施
セミナーの冒頭では、マレーシアみずほ銀行の溝口正二郎社長があいさつ。マハティール首相の財政手腕について、「18年は国家債務の処理に力を注ぎ、バランスシート(貸借対照表)の健全化を図り、19年は経済に軸足を置き、財政規律に従って景気浮揚を狙った」と評した。同行は、20年度政府予算セミナーを国内3カ所(クアラルンプール、ペナン、ジョホールバル)で開催予定で、延べ200人の参加を見込む。
情報提供:株式会社NNA
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https://www.nna.jp/corp_contents/infomation/2019/190802_nna/
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