海外教育Navi 第21回
〜海外在住中に家庭内でできる母語教育〜〈前編〉

記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.幼児を連れて海外に行きます。日系の幼稚園はありません。家庭内でできる母語教育について教えてください。

幼少のお子さん連れでの海外へのお引っ越しは、ご心配が多々あるかと思います。そのなかの大きな一つがお子さんの母語教育ではないでしょうか。ここでは、私自身の体験をもとに、ご家庭でできる母語教育について考えてみました。

私がイギリスに移住したのは、長女が7歳のときでした。彼女は小学1年生を終えるまで日本で育ち、日本語の基礎はかなりできていたように思いますので、それほど日本語の心配はしていませんでした。そして長男、次女が生まれました。イギリス人の夫を持つ身でありますので、下のふたりの子どもたちの日本語は、自分ががんばらないとなりませんでした。

そこで、あとに挙げるように、とにかく日本語に触れる機会をできるだけたくさんつくろうと思いました。

読み聞かせ、お話でことばの世界を広げる

ある晩、保育園児だった娘が「あたりが、しーんとしずまりかえっていて、なんだか怖い」と言いました。まるで本からそのまま出てきたような台詞を聞いて思わず笑ってしまいました。このように、子どもたちはお話で聞いたことばをよく覚えていて、驚かされることがあります。

「おやすみなさい」と電気を消す前に、どんなに短くてもよいのでお話を読んであげたいものです。本がなくても添い寝をしながら、お話を一つ……お子さんが登場するつくり話でも、誰もが知っている昔話でも。そして、話し終わったら、そのお話について、お子さんに問いかけたり、感想を聞いたりして会話の機会をつくるといいですね。

日本語の歌で語彙を増やす

末の娘が2歳になり日本人幼稚園に通いはじめたとき、担任の先生が「同じ年齢のお子さんに比べて語彙がとても多くて驚いた」と話してくれました。何か特別なことをしているのかと聞かれて考えました。末っ子である彼女にかける時間はあまりなかったのですが、考えられることが一つありました。車で移動する際や家にいるときに、よく童謡のCDをかけていたことです。

おそらく皆さんも覚えがあると思いますが、音楽といっしょだと歌詞がよく頭に入ります。子どもはわけのわからないことばを適当に歌っている場合もありますが、いろいろなことばを歌を通して覚えることができたのではないかと思っています。

日本語で考えて遊ぶ、ことば遊び

皆さんご存じの「しりとり」「なぞなぞ」「伝言ゲーム(人がたくさん必要ですが)」のほかにも、ことば遊びはいくつもあります。

いまのように長旅を動画等を見て過ごせる時代ではなかったので、子どもたちとはよく「ものあてゲーム」をしました。遊び方は、まずひとりが頭の中で何か答になるものを決めます。それについて、ほかの人が順番に質問をして、その答が何かをあてる簡単なゲームです。おそらくこのゲームで「それは、人間より大きいですか?」などと質問を考えるときの子どもたちの頭の中は、得意な英語ではなく日本語でいっぱいだったのではないかと思います。

ワークブック/ワークシートで読み書きの練習

幼児向けの通信教育の教材はいくつもあると思いますが、我が家の場合、土曜日の補習校に上がるまでは市販のワークブックを利用したり教室に通ったりして読み書きを練習しました。

ほとんどの読み書きの教材は、初めに運筆力をつける練習から始まるようです。幼児のころから手の届くところにクレヨンや紙を置いておき、好きなときに自由に使えるようにしておくとよいですね。ぐるぐるでもひょろひょろの線でも、自由に紙に描かせ、筆記具と仲よしにしてあげたいものです。

ちなみに鉛筆をお手本のように持たせたいと思うのであれば、はじめが肝心です。海外にいると、びっくりするような持ち方をする人をたくさん見かけます。ペンをどのように持つのかはもちろん個人の自由ですが、あとで直すのはたいへんなので、お箸の持ち方と同じくはじめからきれいな持ち方や姿勢をできるだけ身につけさせてあげたいものです。

インターネットを利用する

いまはとても便利な世の中になりました。海外にいても、お子さんの日本語を育むためにインターネットを使って無料でできることがたくさんあります。ご存じかもしれませんが、いくつか例を挙げてみます。

・Skypeなどを利用して日本国内の親類や友人等と話をする
・YouTubeなどを利用して日本語の動画を見る
・ワークシート(幼児向けのものから多種多様にあります)をダウンロード、印刷して取り組む

そのほか日本語の歌や映画、本等を購入するのにもインターネットを活用するととても便利ですね。

また我が家には、アマゾン・エコーという、音声による指示で音楽の再生や商品の注文、家電製品の制御などいろいろなことができる人工知能があります。おそらく数年先には、このようなものもお子さんの日本語学習に役立つものとなることでしょう。

「第22回 〜海外在住中に家庭内でできる母語教育〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
チューリップロンドン英徳学園代表
大貫 久子

東京都杉並区出身。多彩な人生経験を経て1995年、再婚を機に渡英。子どもたちが日本語で遊び学ぶことのできる場所、「Tulip London英徳学園」を多くの人たちとつくり15年。3人の子育てはすでに終了し、現在は老後の生活設計を考えることと仕事を楽しみとする。
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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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