新型コロナウィルスによるスモールビジネスの対応と消費者の反応
- 2020年5月6日
「なぜ」このツール、この方法、このタイミング?など、オンラインビジネスやデザインの世界を一歩踏み込んで考えます。
弊社Graphnetworkの海外事業として、これまでWeb開発やオンラインコンテンツ制作以外にも、飲食店経営も行ってきました。
今年の2月に、弊社初の小売店プロジェクトCrane and TurtleのPOP UPショップをオープン、3月には実店舗のグランドオープンを控えているところで、パンデミックにより営業休止となってしまいました。この状況に対するアメリカの中小企業の対応方法はさまざまです。
Crane and TurtleのあるSomervilleは、MITやHarvardのあるCambridgeのすぐお隣で、学生や若者が多く20代から40代が65%以上を占める活気のある町です。Start upや個人事業も盛んで、ローカルスモールビジネスが集結しています。
Bow Marketという古い駐車場を改築してできたショッピングモールは、Young professionalsを応援するべくオープンし、ラディカルでイノベーティブなビジネスが約30店舗展開されています。Crane and Turtleもその中に位置し、BeautifulでかつPracitalな日本製の商品を紹介し、長く使ってもらうことで、無駄や大量消費の削減につながるようSustainabilityに貢献したいという思いでビジネスをスタートさせました。
ほかにもBow Marketにはフェミニストワインバー、ローカルビール工場、アンティークブティック、中古アートサプライ店などが軒を連ねます。それぞれ差別や環境、雇用や消費などに関してさまざまな強い信念があり、ビジネスを通じてより良い社会を築こうと取り組んでいます。
そんな熱いビジネスたちをサポートする地元の方々も強い意思を持ち、一消費者として責任を持って消費の選択をします。ローカルビジネスから購入するという行為は、ある意味政治に参加するくらい意図的です。
今回のパンデミックに対し、大企業とスモールビジネスの反応は表面的に見てとても対照的でした。金銭やPPEの寄付、無償でのサービス提供などの対応が目立つ大企業の対応と比較し、スモールビジネスは、現在の過酷な状況やいかに悪影響を被っているかを伝えて消費者から寄付やサポートを得るといった対応が多く見られました。一見大企業側の懐の深さを感じてしまいがちですが、数多くのレイオフや下請け業者への業務停止など、表面的には現れない形で損害を与えているのは、アメリカでは過去最大の失業保険申請率を記録していることからも明らかです。
スモールビジネスに見られる同情を買うような懇願スタイルは、ビジネス戦略として継続するものではないうえ、消費者に情けを乞う行為自体疑問があるという印象もあるでしょう。しかし実際には、「これまで以上にデリバリーの受注が増え、結果的に売上が過去最大になった」「ドネーションで集めたお金で病院のワーカーに1000食分届けたことが報道され、注文が殺到した」という飲食店など、塞翁が馬となるケースも多いようです。スモールビジネスの透明性や素直な意見が好感を呼ぶだけでなく、スモールビジネスをサポートすることで自分も何かに貢献したような気分を消費者に提供している部分もあるのだと、ローカル新聞は伝えています。
一方で、中小企業向けに雇用者を守る助成プログラムPPPで約10億円を得たShake Shackが全額返金したという話題には、厳しい意見が数多く寄せられています。「よりお金が必要な中小企業に渡るように返金します」と発表したShake Shackに対し、「そもそもそのお金が必要じゃないのに申請するのがおかしい」「後になってバッシングを受けるのがこわくなって返しただけでしょ」「もうShake shackはサポートしない」などの否定的なコメントが目立ちました。
返金したことは称賛されるべきとの各ビジネスサイトの記事とは正反対に、消費者からはネガティブな意見ばかり。その裏側には、本当に助けの必要なスモールビジネスには配当されないプログラムの規制の不等性について疑問を抱く方も多いようです。ちなみに中小企業の定義は従業員数が500人以下。6100人の従業員がいるShake shackが申請できたのは、各店舗それぞれの人数は500人以下だったからだそう。それらのLoopholeをうまく利用して、結局は専門家を雇える会社が利を得るようなプログラムの本質にスモールビジネスとそのサポーターたちは納得がいかないようです。
3月20日にSomerville小売店の営業停止のオーダーが下されてから1カ月が過ぎました。各ソーシャルメディアでネガティブとポジティブの両極端なフィードが流れていくなか、Somervilleにおいては、透明性のあるスモールビジネスと自説の強い消費者との間には硬い結束が生まれ、影響力のある企業とセンシティブな消費者との間には深い溝ができてしまっているようです。
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