ゲームやオンライン学習との付き合い方

「なぜ」このツール、この方法、このタイミング?など、オンラインビジネスやデザインの世界を一歩踏み込んで考えます。

新型コロナウィルスの影響で世界中の学校が閉鎖される中、想定外にスクリーンタイム が与えられて喜んでいるこどもも多いようです。学校や企業も積極的にオンラインコンテンツを提供し、必然的にインターネット経由で情報を得る現在、スクリーンタイムをめぐるディべートは「スクリーンタイムはアリかナシか」から「どのようにスクリーンタイムを過ごすか」にシフトしています。幼いこどもにデジタルデバイスを与えることに嫌悪感を持つ親は多いようですが、今回の状況でデジタルデバイスのもたらす好影響も着目されているようです。

キレやすいこどもになる、人と接するのが苦手になるなどといったスティグマのあったデジタルデバイスが、人と接する唯一の手段となり、デジタルデバイスにこれまで触れていなかったアクティブなこどもたちは今、外出できずにキレているという状況に。

ユニセフのリサーチでは、メンタルや社会性においてデジタルデバイスの与える影響は少ないという事実も。とはいえ、デジタルデバイスに頼りすぎて、ベビーシッターや先生、親の代わりとしてすべてをデジタルデバイスに任せてしまうのも問題です。iPadを渡して朝から晩まで放置するような環境を作るのではなく、一緒にコンテンツを楽しんだり、その後にどう感じたか、次はどうやって取り組むかなどの予定や目標を立てることで、さらに効果的にコンテンツを消化できます。

私の4歳の息子も、3月中旬からPre Schoolが休校となり、今月行われるはずだったボストン日本語学校の入学式も見送られました。自宅でできる教材のダウンロードや郵送、動画リンクの送付など、積極的にコンテンツを提供してくれる日本語学校と、休校の案内と同時に連絡が途絶える現地のPre Schoolと、その学校の緊急時の対応に大きな差が見られたのも印象的でした。

日本語学校の担任の先生のご挨拶動画は数分の短いものでしたが、息子はしっかりと集中して画面を見つめ、質問には大きな声で答えていました。動画はインタラクティブではないものの、こどもにとっては1on1で話してくれている感覚になるので、より真剣に向き合う気がします。

また、学校でどのようなことを習っているのか親がよく分かるというのも利点です。今日学校の動画で習ったよね、と普段の生活ですぐに復習ができるので上達が早くなるうえ、教え方を統一することでこどもも混乱しない気がします。先生と異なる意見があれば、違った意見もこどもに説明できるので、さまざまな物の捉え方を教えられます。先生としてはいつも授業参観があるような感じで緊張感が絶えなそうですね。

ゲームに関しては賛否両論ありますが、弊社には自分自身がゲームで育ったという経験を持つ者が多いので圧倒的にゲーム支持派です。会社を設立して20年近くになり、社内にこどもを持つ親が増えたことで、子育てに関する話題が増えました。息子が何時間もゲームをすることに対してこれで良いのか会社のメンバーと話すと「健康的だ」という意見ばかり。専門家の意見ではありませんが、みずからの経験で良かったと思う人が多いのであれば、まあいいかと思えてきます。

私は個人的にロールプレイングや対戦ものに惜しみなく時間を費やした経験はないので、それらから得るベネフィットに関してはよく分からないのですが、テトリスやぷよぷよ、数独などのパズルゲームは大好きでした。長時間プレイすることで、実生活でもスーパーで陳列されている商品を見てテトリスを思い出したり、目を閉じるとブロックが上から落ちてくることを考えたりといういわゆるテトリスエフェクトは、ポジティブシンキングや脳を効率的に使うのに効果的という研究結果もあり、こんな状況だからこそゲームに没頭させる時間があっても良いのではと思います。

学校に行かないことで、人の気持ちを理解する心を養ったり社交性を高めたりすることができないのでは?と心配する声が多いと聞きました。これに関してもさまざまな考え方がありますが、アニメや映画で感動したり、主人公に共感したり、道徳を学んだりと、デジタルコンテンツから学べることはたくさんあります。こどもの時に見て印象的だった作品や、衝撃的すぎて人生が変わった作品などがある方も多いことでしょう。そうした経験をアニメや映画を通じて共有することで、親として伝えられることもたくさんあると思います。

多くの人が情熱を注いで作った作品を一緒に見て、終わったら「はい、早く寝なさい」ではなく、何を感じたか、なぜそう思ったか、私はこう感じた、などのコミュニケーションをはかることで、こどもがどういう人間なのかを知り、私はどういう人間なのかをこどもに知ってもらうための対話が生まれます。こども番組を見たってしょうがない、とこどものスクリーンタイム=親のフリータイムにするのではなく、人間性を高めるコンテンツとして向き合い、内容を慎重に選ぶのもコンテンツを消化するうえで重要です。

また、語学を学ぶのにもデジタルコンテンツは有効です。私の周辺にも、アニメで日本語を覚えたという方も多く、私も映画通じて英語を多く学びました。「日本語を忘れないようにしたい」あるいは「少しでも早く英語に慣れさせたい」と、願いに応じてコンテンツを選び、日常会話に触れさせることが可能です。

コンテンツによっては、こちらが心配してしまうような差別的発言があったり、暴力的な表現があったり、政治的な陰謀があったりと、こども向けでない内容を晒している危険も感じるかもしれませんが、それはデジタルコンテンツに限ったことではなく、むしろ日常のほうがvulnerableという意見もあります。また、問題のある内容に遭遇した時に、何が問題でなぜ問題なのかを説明することで、物事の善悪を判断する知識が得られることでしょう。

とはいえ、やはりこどもとずっと一緒に過ごしてすべて説明しているわけにはいかないので、なるべく優良なコンテンツに触れさせ、こどもがみずから学んでくれるような環境が理想的です。

この状況を気に、学校や友達と積極的に情報交換をしてデジタルコンテンツに精通することで、こどもへの理解も深まるかもしれません。

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Mieko Murao

Mieko Murao

ライタープロフィール

2001年株式会社グラフネットワーク設立。2011年に拠点をアメリカに移し、グラフネットワークアメリカ支社を設立。Web制作業務だけでなく飲食店の経営やプロデュースなどを経験し、企業や飲食店のバックエンドシステムの構築、アプリの開発など “よりビジネスを効率良く” するためのツールを企業の要望に応じて提供。多くの日系企業のIT化に一役買っている。子育てと仕事の傍ら、MITのIntegrated Design and Management修士課程プログラムにて、Human Centered Designを研究中。また、ボストンにて日本の生活用品を紹介し、新しい消費スタイルを提案するCrand and Turtleという小売店プロジェクトも展開している。

Graphnetwork, Inc. (USA) Founder, CEO
Graphnetwork, Inc. (Japan)  Co Founder, Former CEO
Crane and Turtle  Owner

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