第84回 大学の志望理由

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

2020年9月末、ニナは大学に入学する。彼女が進学先として選んだのはカリフォルニア大学(UC)の中の1校だ。ニナは、私が日本の大学の帰国子女枠をすすめても耳を貸さず、州内外の私立大学から受験を促すダイレクトメールが届いてもまったく興味を示さなかった。しかも将来目指す仕事が決まっていないので、この大学でこれを学びたいという動機もない。進学を機に遠くに行きたいという希望もなく、受験する大学を選ぶ理由には「憧れ」といった要因もあるように思うが憧れの大学というのも存在しなかった。結果的に、UC数校とカリフォルニア州立大学(Cal State)1校を「専攻未定」のまま受けた。

実は受験校を絞る段階で、本人はCal Stateだけで良いと主張していた。その理由は、UC受験には、Cal Stateでは課せられていない数種類のエッセー提出が義務付けられていることだった。「エッセーでは、自分がいかにすごいことをしたかを主張しなければいけない。それは非常にアメリカ的な自己主張の精神から来ている。日本人的なマインドを持つ私は自分がしてきたことを大げさに書くことをしたくない」というのが彼女の言い分。それを言われた時は、私自身の謙虚な考え方がそこまで遺伝していたのかと責任を感じた(もちろん冗談)。そして、私は「エッセーを書くのが面倒なだけではないか。アメリカで生きていく以上、自己主張は避けるわけにはいかないのだから、彼女の言い分を受け入れるわけにはいかない」と思い、説得することにした。

そこで、大学在学中に日本に留学したいと言っている本人に、「Cal StateよりもUCのほうが、交換留学する際の選択肢が広い。ニナのように、将来何になりたいか、何を学びたいかが決まっていない場合は、特に大学で選択できる範囲や選べる機会を狭めるべきではない。できるだけ多くの専攻を学べる大学が良いし、留学先も広範囲にわたっているほうが良い。アメリカは、大学を卒業してすぐに就職できる社会的なシステムも整っていないから、卒業生がどのような就職先に進んだのか、その可能性についても探ったほうが良い」と話した。結果、「自分の希望が定まってないのに選択肢の幅を狭めるべきではない」という話が本人の心に響いたようで、UCの受験に合意。昨年の夏休みにはエッセー対策のため、塾に通うことにしたのだった。

キャンパスライフはお預け

大学合格の通知はオンラインを通じて順次届いた。UCの中でも北カリフォルニアにあるキャンパスはあまりにも遠い。別のキャンパスはサイエンス系には非常に強いが、文系の専攻分野が限られている。また、かなり南にあるキャンパスは、学部も環境も申し分ないがやはり遠い。ニナが進学を決めたのは、フリーウェイを使えば自宅から1時間ほどと適度な距離で文系理系の学部も充実している1校。しかも、かなり早い時期に「オナースチューデント」に選ばれ、奨学金を提供するという知らせが届いたことがニナの背中を押したようだ。

ちなみに、一般的にアメリカ人はどのような理由で大学を選ぶのだろうか。米国教育省の2018年の調査によると1位は「アカデミックな質と評価」だった。同率1位が「自分が学びたい学部があること」、3位「就職率」、4位「学費」、5位「大学院への進学率」、6位「キャンパスライフ」、7位「スポーツチームや学校のスピリッツ」、8位「家から近いこと」、9位「スポーツ施設や機会の充実」、10位「家族や友人の推薦」と続く。

さて、7月には寮のルームメイトも決まり、新生活に思いを馳せていたニナだったが、コロナパンデミックの収束が見通せない状況下、秋からの授業は100%オンラインに決定した。寮の申し込みはキャンセル、自宅生活がしばらく続きそうだ。「その間に専攻を決めなくちゃね」と私が催促するように言うと、「もちろん、分かってるよ」と答えた。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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