そんなに急いでどこへ行く?

先日、ちょっとショッキングなニュースを見ました。以前に比べると今の若者の集中力が33%低下したため、ポップソングが短くなっているという内容のものです。Samsung社の調査によると、2000年以降、リスナーの集中力が平均12秒から8秒まで落ちているとのこと。また、気に入らないとすぐ次の曲へスキップするという行為が習慣化されているため、音楽制作側もなるべくサビを前に持ってくる、曲のイントロを短くする、楽器だけのソロパートはなくすなどの工夫をして、何とか曲のヒットに繋げようと試行錯誤しているようです。時代は変わってるんですね。私のような一昔前の人間にとっては、このトレンドがちょっと寂しい気もします。私が幼かった頃はカセットが主流だったので(あなたいくつ?と突っ込まれそうですが)、次の曲を聞きたくてもテープを早送りするのが面倒なこともあり、そのまま流して聞いていました。その後CDを知って、「次の曲に飛ばせるんだ!」と感動したのを今でも覚えています。

欲しい情報や聞きたい音楽がすぐに手に入るこの時代。今欲しいものは今手に入れる。気に入らないのはスキップして、ハイ次へ。常にアンテナを張り、最新情報を求めていく……。新聞の定期購読者数が減っているという話は以前から耳にしますが、今の若者にとっては「なんでわざわざお金を払って、1日前のニュースを入手しなければいけないの? ネットなら最新情報が無料ですぐ見られるのに」というのが本音のようです。

日々の技術革新のおかげで、私たちの情報処理能力は飛躍的に伸びています。仕事で扱うメールもしかり。日本ビジネスメール協会が実施した2020年の調査によると、1日の平均送信メール数は14.06通、受信メール数は50.12通だそうです。これが多いのか少ないのかは正直ピンときませんが、2年前の2018年のデータを見ると、1日の平均送信が約12通、受信メール数が約34通だったので、この2年でもメール扱い件数が増加傾向にあることが分かります。また、同調査によると、全体の16.68%がメール返信を4時間以上待てないと回答しています。

TIME IS MONEYとはよくいいますが、そんなに急いでどこへ行くの、と思うこともありませんか? 確かに今の社会はスピード勝負、「The faster, the better」的カルチャーが主流ですが、たまにはふと一息ついて、スピードを緩めてもいいと思うのです。先月テキサスでは、大寒波の影響で未曽有の大規模停電が発生し、州全体で計画停電が4日間ほど実施されました。ダラスにあるわが家も漏れなく停電となり、電気が来たのは1日に5時間程度。夜はキャンドルライトで過ごし、鍋でご飯を炊き、毛布をひざ掛けにして暖炉の火で温まる……という日が数日間続きました。

電気がないのでテレビも見られないし、携帯電話の電池も無駄にしたくないので、使用時間を最小限に。でも不思議なもので、人間はこういった環境でもそれなりに楽しめるものです。キャンドルライトの中でボードゲームをして遊ぶ友人家族の写真や、裏庭で雪だるまを作って遊ぶこどもたちの笑顔を見ると、この停電経験も捨てたもんじゃないかも、と思いました。まあ、4日限定だから我慢できたということもありますが……。仕事も、いつもなら「メールの返事しなきゃ」「資料作らなきゃ」と常に急ぎモードなのですが、電気がないことには仕事をしようがありません。よって、電気がある時にまとめて作業をし、電気がない時はしない。でも、それでも業務はきちんと回っていきました。そんなに常に急がなくても、なんだかんだで大丈夫なんですよね。日々の仕事のやり方を省みる、とてもいい機会だったと思います。

今後4Gが5Gになり、パソコンの容量単位がメガ、ギガ、テラ、と変わっていく中で、私たちに求められるスピードはさらに速さを増していくでしょう。でも、時には立ち止まってみませんか。今まで飛ばしていた1曲を最初から最後まで聞いてみると、何か発見があるかもしれません。1日遅れの新聞にも、プロの記者さんたちがしっかりとまとめ上げた、ネットにはない重要情報がたくさん入っています。時間に追われず、心に余裕をもって人生を楽しんでいきたいですね。

<参考>
●Pop songs will get SHORTER in future because the attention span of young people has dropped by 33% since 2000, experts predict:
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-9085211/Pop-songs-shorter-decade-faltering-attention-spans.html

●一般社団法人日本ビジネスメール協会:
https://businessmail.or.jp/research/

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

北村祐子 (Yuko Kitamura)

北村祐子 (Yuko Kitamura)

ライタープロフィール

在米23年。津田塾大学を卒業後に渡米し、ルイジアナ大学でMBAを取得後、テキサス州ダラスにある現在の会社で勤務すること20年目。ディレクターとして半導体関係の部品サプライチェーン業務に関わるかたわら、アメリカで働く日本人女性を応援しようと日々模索中。モットーは、「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

資格の学校TAC
アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. インターネット上では、会社の名誉・評判を毀損するような虚偽の投稿をはじめ、著作権侵害、プライバシー侵...
  2. 2021年10月10日

    留学が転機になった!
    2021年7月末、ロサンゼルス名古屋姉妹都市委員会(LANSCA)と名古屋市との共催による、...
  3. 25年前にLA 郊外のPalm Springsに2年ほど住んでいた。Coachella Va...
  4. ニューメキシコ州の南東部、テキサス州との境に位置するグアダループ山脈の麓には、地底に広がる鍾...
  5. 2021年10月4日

    就職&転職ガイド
    転職大国アメリカの労働市場 アメリカでは転職がごく一般的。United States Depa...
  6. 偶然出会ったシンクロが人生の糧に シンクロナイズドスイミング(現・アーティスティックスイミング...
  7. 相手の過失で事故に巻き込まれた場合でもご自身の過失で事故を起こしてしまった場合でも、共通した...
  8. 2021年8月9日

    課外活動の重み
    日米の学校や受験システムの違いで実感するのが、生徒の活動への取り組みに対して、日本では短期的...
ページ上部へ戻る