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海外教育Navi 第79回
〜発達障害の子どもを連れて日本に帰国する〜〈前編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2021年7月1日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.発達障害の子どもを連れて、日本に帰国します。子どもにはADHD(注意欠陥多動性障害)と学習障害があります。帰国に際して気をつけるべきことや、準備すべきものを教えてください。
赴任地で特別支援教育サービスを受けてこられた発達障害のお子さんを連れて日本に帰国するということですね。海外ではよいサポートや支援サービスを受けられていたとしても、ほとんどは現地語によるもの。「やっと日本語で教育が受けられる!」とほっとしますが、学校教育制度が違うので、お子さんに必要な教育的支援がどのように継続できるのか、心配になるのも無理はありません。
帰国先のイメージづくり
支援の提供体制は市区町村によって異なりますので、まずは、転居先にどのような支援サービスやシステムがあるのか、それをどのようにしたら受けられるのか、インターネットを活用したり、直接電話したりして調べておくとよいでしょう。
一般的には発達支援センターのようなところが窓口になっていますが、年齢によって、たとえば幼児は担当や窓口が別になっている場合もあります。住居が決まっていれば、直接、学校に聞いてみると案内してくれるかもしれません。また海外子女教育振興財団の教育相談室でも相談に応じています。
お子さんの学校生活が帰国後はどのようになるのか、大まかなイメージを持つことがここでの目的となります。
たとえばアメリカの学校では、必要な支援サービスは学校内で提供されますが、日本ではサービスを提供している拠点校に週に数回通級したり、その学校に越境して転入したりするケースもあります。通級や越境の場合、送迎サービスの有無は地域にもよるでしょうから、住居が選択できるかたはそういったことも考慮事項に入るかもしれませんね。
帰国後への準備
そうして集めた情報を持って、現地校の先生と帰国に向けた準備を進めていきます。現在受けていて効果のある合理的配慮や支援サービスがどのように継続できるか、また指導の形態が変わるようであれば、その移行をどうスムーズにするかをいっしょに考えてもらいましょう。
「帰国や転勤が決まったことを早々に学校に伝えてしまうと『どうせ、いなくなる子だから』と指導を手抜きされてしまうのではないか」と心配されるかたもいますが、そんなことはありません。むしろ、帰国という大きな変化に必要な準備をしてもらうためにも早めに伝えて、支援や指導のあり方に配慮してもらいたいものです。
IEP(Individualized Educational Plan)等の書類
IEPとは、国や地域によって呼称が異なるかもしれませんが、お子さんに対して学校で保障される支援の詳細を書いた書類のことです。そこに何が書かれているかをしっかり理解しておきましょう。また、この書類は日本に帰ってからも「このようなことが必要だと認定されていた」という証拠になりますので、日本で合理的配慮を要請するときも役に立ちます。
IEPだけでなく、特別支援教育受給資格を認定されたときのアセスメント報告書や、毎学期の進捗状況を伝える報告書なども日本で措置を決めるときに参考になるかもしれませんので準備しておきましょう。紛失したものがあれば、特別支援教育のオフィスに申し出れば写しをもらえます。あるいは、そういった書類を電子ファイルにしてもらっておくと便利かもしれません。
→「第80回 〜発達障害の子どもを連れて日本に帰国する〜〈後編〉」を読む。
ニューヨーク日本人教育審議会・教育文化交流センター教育相談員
バーンズ 亀山 静子
ニューヨーク州公認スクールサイコロジスト。現地の教育委員会を通じ、幼稚園から高校まで現地校・日本人学校を問わず家庭で日本語を話す子どもの発達・教育・適応に関する仕事に携わる。おもに心理教育診断査定、学校のスタッフや保護者とのコンサルテーション、子どもの指導やカウンセリングなどを行う。
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