Give & TakeとGive & Give

「Give & Take」というフレーズ、誰しも一度は聞いたことがあるのでは。何かを与えたらその見返りに何かをもらう、また何かをもらったらお返しに何かをあげるという、相互補助の意味です。与える側と受け取る側の双方にメリットがあるため、人間関係をうまく続けていくアプローチの一つとして広く知れ渡っている方法です。

このフレーズ、よく見るとTakeの前にGiveが来ています。「まずはGiveをしましょう。Takeをするのはそのあとです」という姿勢がうまく表れていると思います。また最近では、「Give & Give」というフレーズも聞きます。こちらは「Takeとしての見返りを期待せず、みずから進んでGiveをする人になりましょう」といった意味がこめられています。

私はこのGiveを優先する姿勢がとても好きです。特にアメリカに住んでいると、Giveの精神が当たり前のように社会に広がっているなと感じます。ボランティア活動やチャリティイベントなどはほぼ毎週のように町のどこかで催されていますし、なにか特別な団体や活動グループなどに所属せずとも「ボランティアをやってみたいな」と思ったら、すぐに登録してイベントに参加することができます。

ちょうど今頃だと、ガールスカウトのクッキー販売を町のいたるところで見かけますし、12月になると、スーパーの入口などでSalvation Armyの募金を募る人たちを見かけますよね。彼らが鳴らすベルの響きを聞きながら「あぁ、またクリスマスがきたな」と季節を感じてみたり。私の勤務する会社でも、数カ月おきに何かしらのチャリティイベントやファンドレイジングなどを実施しています。Giveという行為は、アメリカではもはや日常生活の一部です。

ペンシルバニア大学ウォートン校の組織心理学者、アダム・グラント氏の著書『Give and Take: A Revolutionary Approach to Success』によると、人は主にGiver・Taker・Matcherの3タイプに分けられるそうです。Giverは人に惜しみなく与える人、Takerは真っ先に自分の利益を優先させる人、Matcherはその中間で、損得のバランスを考えながら行動する人となります。さて、この中で、会社の組織で一番成功するタイプはどれでしょう?

彼の研究によると、最もポジションと給与が高かったのは、実はGiverの傾向をもった人達だったそうです。GiverよりもTakerの方が自己のために行動するので成功しやすいのでは?と思った方もいるかもしれません。確かにTakerは短期的には有効なようですが、「あいつは自分のことしか考えない利己的なやつだ」と周囲から見られるようになり、結局長期的にはマイナスの結果になるとのこと。成功するには自己中ではダメなんですね。

最近のミレニアル世代を皮肉って表現する、“Entitlement”という言葉があります。直訳すると「権利」という意味ですが、「私はこの権利を与えられて当然」「あなたは私のためにこれをしてくれて当然」といった態度を表現する言葉です。まずは私にとってふさわしいと思う権利を私に与えなさい。そこではじめて、相手へリターンを提供しますという発想のようです。

言いたいことも分からなくもないのですが、これではまるでTake & Giveですよね。これだから今の若者は……といった短絡的なステレオタイプ判断をするのもいかがなものかと思いますが、今の新しい世代の態度から、そう感じている人が多いのも事実です。自分を中心に考えるTakerではなく、与え続けるGiverなマインドを持ち続けていたいですね。

最後に、私がステキだなと思った名言を二つご紹介します。

新約聖書 ルカの福音書6章38節
「与えなさい。そうすれば自分も与えられます。人々は量りをよくして、押しつけ、揺すり入れ、あふれるまでにして懐に入れてくれるでしょう。あなたがたは人を量る量りで、自分も量り返してもらうからです。」

マザーテレサ
「与えることを学ばねばなりません。でも、与えることを義務と考えるのではなく、与えたいという願うことが大切です。」

人を助ければ、回りまわって自分に恩恵が返ってきます。与えれば、それを評価し感謝してくれる人が周りに必ずいます。まずはGiveを先に始めてみませんか?

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北村祐子 (Yuko Kitamura)

北村祐子 (Yuko Kitamura)

ライタープロフィール

在米23年。津田塾大学を卒業後に渡米し、ルイジアナ大学でMBAを取得後、テキサス州ダラスにある現在の会社で勤務すること20年目。ディレクターとして半導体関係の部品サプライチェーン業務に関わるかたわら、アメリカで働く日本人女性を応援しようと日々模索中。モットーは、「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」。

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