海外教育Navi 第110回
〜こどもに日本を習得させるには〜〈後編〉

Q.海外暮らしが長くなり、子どもは現地にどっぷりつかっています。日本語も怪しくなってきました。帰国の目途は立っていません。このままでよいのでしょうか。

前回のコラムでは、海外生活での言語習得の考え方についてお話ししました(前回記事へ)。今回は、日本の文化を学ぶ方法についてお話しします。

日本の文化等の体験をさせる

日本で暮らす子どもたちは、まさに「日本的な」環境のなかで、日々日本語を浴びて成長しています。そこで海外で暮らす子どもたちには、可能な範囲で日本の文化等に触れさせてあげることも大切です。

<日本人会・コミュニティー>

「運動会」など種々の行事や催しものへ積極的に参加してください。

<補習校>

近隣に補習校がある場合は、相応の学年に入って教科の学習をしてください。日本語の学習言語の習得にはいちばんよい場所となります。

さらに、補習校では学習だけでなく、日本の体育的行事・文化的行事・儀式的行事を行っています。それらは子どもたちにとって「日本」に触れるとてもよい機会です。

また、補習校では給食や掃除などは実施していないのが通常ですが、それでも種々の「日本の学校文化」に触れるたくさんの機会があります。

学校で行われる「古本市」なども積極的に活用して、書籍・漫画などを手に入れてください。

<一時帰国>

機会があれば、短期間でも日本への一時帰国をして、日本に直接触れる機会をつくることも大切です。

その際、国内の小・中学校への「体験入学」をすることができれば、海外暮らしの長い子どもにとっては本帰国に向けた大切な予行練習の場ともなりますので、ぜひとも検討してみてください。

日本の習慣等を家庭内で身につけさせる

お辞儀などのあいさつ(上下関係を模擬的に設定するのもいいでしょう)、箸や食器の持ち方や並べ方、掃除の仕方や風呂の入り方、座る姿勢や席順など、海外暮らしのなかではまったく必要のないこと、そぐわないこともあるでしょうが、日本のことをあまり知らない子どもたちに日本にはこのような習慣があることを伝えてあげるのはとても有意義なことです。帰国した際に心づもりがあるかないかでは、適応のスピードが変わってきます。

さらに、伝統的な日本の遊び、たとえばしりとりやカルタなどの言語系のもののほか、おにごっこやあやとりなど、家族で遊びを通して触れ合うことも大事です。

終わりに

子どもにとって日本は遠い存在、日本が帰る国ではなく、行く国のような感覚かもしれません。

急な帰国もあるかもしれないし、海外の上級学校・大学等へ進学、就職することも考えられます。

また、母語を日本語以外の言語にすることも考えられます。

そこで大切なのは、「お子さんの将来に対してどのようなイメージを持つのか」、親子でつねに話し合い、共有化をはかっていくことといえます。

共感、共振、共鳴。

イメージ、将来の道は1つとは限りません。折りに触れてご家族での話し合いを積まれてください。子どもの苦労にどのように寄り添うか、ふだんから子どもを広い視野を持って温かい目で励まし見守り、信じてあげる親の態度・気持ち・スタンスが、子どもを目覚めさせ、成長させる確かな道につながります。

今回の相談員
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー  
後藤彰夫

千葉県と東京都で教員、ワルシャワ日本人学校教諭を経て、東京都の公立学校で教頭・副校長・校長を歴任。2013年から6年ほど本田技研工業株式会社で教育相談室長を務め、2019年より海外子女教育振興財団の教育相談員。東京都海外子女教育研究会、全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会事務局長も務める。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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