ジャパニーズウイスキー入門
- 2024年12月2日
- 2024年12月号掲載
ジャパニーズウイスキーの魅力
ジャパニーズウイスキーのルーツは、スコットランドから輸入されたスコッチウイスキーの技術と知識にある。しかし、ただスコッチウイスキーと同じ蒸留方法で造るのではなく、そこに独自の要素を取り入れることで、ほかにはない個性的な味わいを生み出しているのだ。
魅力①
仕込み水の柔らかさ
ウイスキー造りにおいて味わいを左右する大きな要因の一つに水質がある。
水質でもっとも重要なのが、天然水であることと、そのミネラルバランスだ。ミネラルバランスは原料となる大麦の発芽や蒸留工程の発酵速度に影響するため、特に重要とされている。
日本の水質は軟水、アメリカやヨーロッパの水質は硬水が主流のため、必然的にそれぞれの国で使われる仕込み水は異なってくる。一般的に軟水で仕込んだウイスキーは軽くまろやかな味わいになり、硬水で仕込んだウイスキーは個性的でクセが強くなるといわれている。日本国内でも蒸留所によって使われる水質は異なる。日本初の蒸留所である山崎蒸留所ではミネラル分の多い硬度94程度の準軟水が使われており、この水で造られたウイスキーは複雑な風味や重厚感が出やすいといわれている。一方、白州蒸留所で使われる水は南アルプスの花崗岩層から湧き出る硬度30程度の軟水で、この水で造られたウイスキーは軽快でなめらかな味わいが特徴となる。
このように、欧米では出すことのできない味わいを表現できるのがジャパニーズウイスキーの大きな特徴であり、人々を魅了するポイントと言えるだろう。
魅力②
複雑で繊細な香りと味わい
スコットランドではウイスキーの蒸留工程が分業化されている場合がほとんどだ。ウィスキーの原酒を造る業者があれば、その原酒を買い入れてブレンドと瓶詰めを行う業者もいる。一方で、日本の蒸留所は発酵から蒸留、醸成、ブレンド、瓶詰めまでの製造工程を一つの業者が一貫して行うのが一般的。一つの蒸留所が多種多様な原酒を造り分けるだけでなく、何十種類ものブレンデッドウイスキーを生産することができる。つまり、それぞれの蒸留所が日本人特有の繊細な味覚を考慮した高い蒸留技術とブレンド技術の経験とノウハウを蓄積しており、ブレのない一貫した味わいを生み出すことができるのだ。
また、ジャパニーズウイスキーはスコッチウイスキー特有のスモーキーな味わいを抑え、軽い口当たりに仕上げられているものが多い。なかでもジャパニーズウイスキーの特徴として高く評価される甘い香りは、熟成に使われる樽材にある。日本では世界的にも珍しいミズナラを樽材として使うことが多く、これによって香木のようなエレガントで奥行きのある香りが生まれる。
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