【ニューヨーク不動産最前線】物件探しの前に知っておきたい、ブローカー手数料の新ルール

不動産の売買や賃貸を検討している方にとって、気になるのが「ブローカー手数料」。これまで誰が払うのか、いくら払うのかは慣例に頼っていた部分が多かったのですが、近年全米で見直しの動きが進んでおり、ついにニューヨーク市でも大きなルール変更が始まっています。今回は、売買・賃貸それぞれにおける最新のブローカー手数料のルールについて、わかりやすく解説します。

売買の場合
ニューヨーク市では、長年にわたり売主がブローカー手数料として物件価格の5〜6%を支払い、それを売主側と買主側のブローカーで折半するのが慣例でした。

ところが、2025年1月より施行された新しい法律により、ブローカー同士で手数料を分け合うという方法が禁止されました。これにより、売主は物件をリスティングする際、売主側ブローカーと買主側ブローカーにそれぞれいくら手数料を支払うかをリスティング契約書に明示しなければならなくなりました。

手数料のパーセンテージは法律で定められているわけではなく、引き続き売主と買主ブローカーあわせて5〜6%とするケースが多いですが、たとえば「売主ブローカーに3%、買主ブローカーに0%」と設定することも可能です。このような場合、買主ブローカーは買主に直接手数料を請求することになり、買主の物件選びにも影響を与える可能性があります。

賃貸の場合
これまでニューヨーク市の賃貸においても、ブローカー手数料に関する法的な定めはなく、テナントが自分のブローカーと貸主側ブローカーの両方に対して、年間家賃の15%程度を支払うのが一般的でした。ただし、マーケットの状況によっては、たとえばコロナ禍のように需要が低迷した時期には、貸主側がブローカー手数料を負担するケースも見られました。

しかし、この慣例もまもなく終了します。2024年12月14日にニューヨーク市議会で可決された法案が、2025年6月11日から施行される予定です。この新しい法律では、「貸主が雇った不動産ブローカーの手数料は、貸主が負担しなければならない」と定められました。つまり、テナントは貸主側ブローカーへの手数料を支払う必要がなくなります。

ただし、注意が必要なのは、テナントが自らブローカーを雇った場合です。この場合は新法の対象外となり、テナントが自身で雇ったブローカーへの手数料は、引き続きテナントの負担となります。

このように、2024年以降、売買・賃貸を問わずブローカー手数料に関する法律が大きく変わり、これまでの慣例とは異なるルールが適用されるようになりました。物件探しを始める際は、最初の段階でブローカー手数料についてしっかり確認することをおすすめします。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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